研究実績の概要 |
3年目は、勤務する大学医学部付属病院の心療内科(当科)外来患者を対象とした診療データベースの解析を進めた。研究代表者と研究分担者が診療をし、過去10年間に当科外来を初診受診した患者のうち、診療データベースに記録された1,000人余りが解析対象者となった。指標として、身体感覚増幅尺度、トロント式失感情症スケール、気分調査票POMS(不安-緊張、うつ、怒り-敵意、活気、疲労、混乱度の6尺度得点)、東大式エゴグラムTEG(CP, NP, A, FC, ACの5つのエゴ得点)、Medical Symptom Checklist(頭痛、胸痛、腹痛、腰痛、関節痛など、16の主要身体症状の頻度・強度・支障度を得点化)、Self-rated Stress Checklist(仕事(学業)、家庭、社会、経済、健康、生活、近所のストレスを得点化)などが用いられた。その結果、心理社会的ストレスが失感情症と身体感覚過敏を介し、痛みにつながるまでの心理メカニズムに関して知見が得られた(国際雑誌、投稿中)。そのメカニズムに対するうつや不安の精神状態の影響や、過剰適応傾向が果たす役割についても共分散構造解析によって定量的な評価を行った。また治療研究として、心因性疼痛に関する認知行動療法による6週間の治療プログラムの開発を進め、ランダム化比較試験によるパイロット研究を進めた。こうした成果はBioPsychoSocial Medicineで特集企画を組み、「認知行動療法による不安と身体症状の軽減効果」、「身体感覚に対する破局的思考、身体感覚増幅、身体症状との関連」をテーマとした論文を研究分担者や研究協力者とともにまとめた。
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