最終年度は、対象施設の大学病院心療内科外来患者を対象とした診療データベースの解析を完成させ、国際雑誌のゲスト・エディターとなって特集企画を組み(企画名:psychosomatic medicine、雑誌名:Journal of Clinical Medicine)、論文刊行を進めた。具体的には、研究代表者と研究分担者が診療をし、過去10年間に当科外来を初診受診した患者のうち、痛みを含む身体愁訴を訴える心身症患者604人の身体愁訴の発現、身体感覚増幅、失感情症、不安、うつ、適応度などの関連を検討した。その結果、心理社会的ストレスが失感情症と身体感覚過敏を介し、痛みにつながるまでの心理メカニズムに関して知見が得られた(Nakao M & Takeuchi T. Journal of Clinical Medicine 2018 May 10;7(5). pii: E112)。そのメカニズムに対するうつや不安の精神状態の影響や、過剰適応傾向が果たす役割についても共分散構造解析(構造方程式モデリング)によって定量的な評価を行った。その結果、過剰適応・うつ・不安の3者が相互に関連し合っている(mutual effect)ことを示した。また、過剰適応と不安は心理社会的ストレスに対して、うつは失感情症に対して影響(causal effect)を与え、身体感覚の増幅、身体愁訴の出現につながるメカニズムを明らかにした。また治療研究として、心因性疼痛に関する認知行動療法による6週間の治療プログラムの開発を進め、そのプログラムを適用したランダム化比較試験の効果についてまとめている。
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