研究課題/領域番号 |
15K08682
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
前田 武彦 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (50271010)
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研究分担者 |
山田 大祐 新潟薬科大学, 薬学部, 助手 (50733680)
川原 浩一 新潟薬科大学, 薬学部, 准教授 (10347015)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨転移腫瘍 / 骨芽細胞 / mTOR / 骨痛 / セマフォリン |
研究実績の概要 |
セマフォリン分子は感覚神経支配、骨代謝、そして腫瘍の転移等の多くのプロセスに関わる重要な制御因子である。骨転移腫瘍では破骨細胞の増加に伴う骨吸収の促進といった骨代謝の異常が生じるが、セマフォリン分子がこの現象に関与しているかについては明らかではない。骨芽細胞様細胞株であるMC3T3-E1を用いて、腫瘍細胞が骨芽細胞由来のセマフォリン分子の発現に影響を与えるかについて解析を行った。マウス由来肺癌細胞株であるLewis Lung Carcinoma(LLC)由来の条件培地でMC3T3-E1を処理すると、セマフォリン3a(Sema3a)の発現は低下した。また、MC3T3-E1をmTORC1阻害剤であるRapamycinで処理をすると、Sema3aの発現は低下した。さらに、Rapamycinの存在下では、LLC由来の条件培地処理によるSema3aの発現減少は観察されなかった。これらのことから、骨転移腫瘍において、腫瘍細胞はmTORC1依存的に骨芽細胞由来のSema3aの発現を減少させ、骨代謝を制御する可能性が考えられる。また、RNAi法にてSema3A遺伝子をノックダウンしたLLC株(shSema3A-LLC)を樹立し、マウスに移植することにより腫瘍形成能ならびに疼痛行動の発現について解析した。対照群として、scramble shRNAを導入したLLC株(scramble-LLC)を使用した。大腿骨骨髄腔への移植により、対照群では移植側後肢への体重負荷重量は対側に比べて減少したが、shSema3A-LLC群においては、その減少は減弱していた。また、移植大腿骨の骨組織切片標本を顕微鏡観察したところ、対照群ではLLC細胞の増殖が見られたが、shSema3A-LLC移植群ではその増殖は軽微であった。以上の結果から、Sema3Aは腫瘍形成能を高めるはたらきを有する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍細胞のマウスへの移植手技を確立し、腫瘍形成と疼痛発現を確認している。また、腫瘍細胞を移植したマウス大腿骨mRNAのマイクロアレイより明らかにしたSemaphorin3Aの発現上昇を明らかにしたこと、そのshRNA発現レンチウィルスベクター導入によるSema3Aノックダウン腫瘍細胞株を樹立し、Sema3A機能的阻害の腫瘍細胞増殖と疼痛行動発現におよぼす影響を既に明らかにしている。以上の成果は、現在までの計画どおりであり、未達のものはない。
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今後の研究の推進方策 |
Semaphorin3Aが腫瘍細胞形成を促進することは明らかにしたが、それが細胞死を防ぐことによるものなのか、あるいは細胞増殖能を高めることによるものなのかは不明である。in vitroレベルで、それらの解析を行なう。さらに、semaphorin3Aと既知の腫瘍形成細胞内シグナルとの関係を解析する。また、培養細胞レベルであるいは移植した個体を用いて、腫瘍細胞中あるいは血中のmiRNA発現解析を行ない、sema3Aシグナルとの関わりを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
セマフォリンが腫瘍から自己分泌されること、腫瘍形成における機能的役割が顕著であったことから、当該年度は個体の実験よりも培養実験が主となった。そのため、動物購入代金が少額ですんだこと、それに伴い組織標本作成の委託を行なう機会が無かった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は個体の実験を中心とする予定であり、組織標本の委託や血漿miRNA解析の委託に当該年度の未使用金額と次年度請求分を合わせた金額が必要となる。
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