研究課題/領域番号 |
15K08683
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
西田 和彦 関西医科大学, 医学部, 助教 (80448026)
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研究分担者 |
松村 伸治 関西医科大学, 医学部, 講師 (70276393)
伊藤 誠二 関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脊髄後角 / 投射ニューロン |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標である脊髄後角投射ニューロンの神経活動の網羅的解析を行う前段階として、脊髄後角投射ニューロンの発生時期と神経前駆細胞領域の解析を行い、これらのニューロン特異的に発現するマーカー分子の同定を目指した。 胎生期の各時期(胎生9日目から12日目)の分裂細胞をEdUラベルしたマウスの個体を用いて、脊髄後角投射ニューロンを逆行性トレーサー、コレラトキシンBによりさらに標識し、その最終分裂時期を見積もった。その結果、これらの神経集団のほとんどは胎生9日目から10日目の間に最終分裂を終えることが分かった。 次に投射ニューロンが転写因子Lbx1陽性の神経前駆細胞由来かどうかを明らかにするために、Lbx1-Creドライバーマウスを用いた系譜解析を行った。その結果、これら投射ニューロンのほとんどはLbx1陽性の神経前駆細胞由来であることが明らかとなった。胎生9日目から10日目の間に分裂する脊髄後角神経前駆細胞はdI1からdI6の6種類が知られている。そのうちdI4からdI6までがLbx1陽性であることから、投射ニューロンはこれらの区画の神経前駆細胞から発生することが示唆された。 これらの区画から生まれるニューロンのうち、dI5は興奮性、dI4とdI6は抑制性ニューロンに分化することが過去の知見で分かっている。そこで投射ニューロンを標識したサンプルでVGlut2とGAD67のin situハイブリダイゼーションを行い、興奮性か抑制性であるかの同定を行った。その結果、投射ニューロンのほとんどは興奮性であった。以上の結果より投射ニューロンはdI5の神経前駆細胞の区画より発生することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である投射ニューロンの神経活動の網羅的解析のためには、投射ニューロン特異的にカルシウムインディケーター遺伝子を発現させる必要がある。そのためには投射ニューロン特異的なマーカー分子についてを明らかにして、その分子に発現するCreドライバーマウスとレポーターマウスの交配により解析に必要なマウスを得るのが近道であると考えられる。 これまでの脊髄後角投射ニューロンの発生の解析により、これらのニューロンは他の大多数の脊髄後角ニューロンと異なり非常に早い時期に最終分裂を終えることが明らかとなった。 本研究では投射ニューロン特異的なマーカー分子の同定にはまだ至っていないものの、この発生時期と発生ドメインの情報は今後投射ニューロンの特異的マーカーを同定するのに大きく役立つと思われる。 したがって、現在のところほぼ当初の計画通りに伸展しているという自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果より脊髄後角投射ニューロンは発生期の脊髄後角神経前駆細胞のdI5ドメインを起源としていることが明らかとなった。過去の知見よりこの領域に発現するいくつかの転写因子が報告されており、これらは投射ニューロンの発生に関与する候補分子となりうる。 そこでこれら候補分子を発現する発現ベクターを構築し、子宮内電気穿孔法を用いて脊髄後角介在ニューロンに過剰発現させて、投射ニューロン様に発生運命が変わるかどうかについて解析する予定である。 何らかの表現系が見られた分子について、そのノックアウトマウスが報告されている場合には、そのマウスを用いた解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始時に計画していたin vivoカルシウムイメージングの実験が遅れた。また当初計画していた遺伝子改変マウスの購入をしなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度未使用分については「今後の研究の推進方策」で記載した遺伝子改変マウス購入にあてる。平成29年度請求額については当初の計画通りに使用する予定である。
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