研究実績の概要 |
種々の非侵襲的計測法を用いてヒトの脳内での痛覚と痒みの認知機構を明らかにすることが主要研究目的である。さらに関連深い触覚の認知機構の研究も行う。脳波、脳磁図、経頭蓋磁気刺激(TMS)といった生理学的検査法と、機能的MRI(fMRI), 近赤外線分光法(NIRS)などの脳血流検査法を組み合わせて総合的に研究を進めていく、世界的にも最先端の研究である。 平成28年度は、かゆみ認知に関する新知見を、英文原著論文として報告した。大脳皮質感覚運動野を非侵襲的に刺激することで痛み知覚が抑制されるという現象に注目し、痒み知覚に対しても同様の抑制効果がみられるかどうか検討した。脳刺激には、微弱な電流を流すことで大脳皮質の興奮・抑制性をコントロールする経頭蓋直流電気刺激法(transcranial direct current stimulation; tDCS)を用いた。その結果、tDCSを15分間施行したところ、ヒスタミン刺激に対する痒み知覚が減少し、痒みの持続時間も短縮することが分かった。今回の研究結果は、痒みの抑制に対する大脳皮質刺激の効果を実験的に検討した初めての報告であり、今後の新たな痒みの抑制法の開発につながる成果として期待できる。本研究は朝日新聞など多くのメディアで紹介された (Nakagawa K., Kakigi R et al A transcranial direct current stimulation over the sensorimotor cortex modulates the itch sensation induced by histamine. Clin Neurophysiol,127:827-832,2016) 他に英文総説2編、日本語総説4編を発表した。
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