本研究の目的は、まず、(1) 64ch CdTe放射線ラインセンサとCdTeフラットパネルディテクタの医療応用として、簡単に使用できるエネルギー弁別型X線撮影装置(CT装置も含む)の撮影システムを開発すること、次に、(2) 患者の被ばく線量を低減するために、このエネルギー弁別型X線撮影装置(CT装置も含む)で、ファントム被写体などのファントム画像撮影で得た基礎データから画像による被写体の材質(線減弱係数や実効原子番号)の違いも画像化して、画質とX線の線質との関係をX線のスペクトル測定から求め、エネルギー弁別型X線撮影装置(CT装置も含む)の最適な画像特性を見出すための撮影法を開発する。(3) この医療応用システムの骨塩定量法、IVR、CTの電子密度測定などへの応用について明らかにする。 上記の研究目的に従い、より臨床に近い被写体として人体(緻密骨、皮質骨、内骨、肺、軟部組織)等価ファントムを用いて線減弱係数と実効原子番号の測定した。緻密骨、皮質骨、内骨、軟部組織の線減弱係数μ(E)は低エネルギー領域で理論値とのずれが生じていることが分かった。これは、管電圧100kVでX線を照射する際に発生する散乱線が低エネルギー領域に強く影響を及ぼしているからであった。また、緻密骨、皮質骨、内骨、軟部組織ではこのような挙動がみられるが、肺では見られなかった。肺にはCa(Z=20)が含まれておらず、緻密骨、皮質骨、内骨、肺には含まれている。Ca(Z=20)は構成原子の中で最も原子番号が大きく、X線と相互作用して散乱線を発生しやすいため、肺では散乱線の影響が小さく、ずれが小さかったと考えられる。本研究では人体等価ファントムの実効原子番号Zを±9.00 %以内で測定できた。人体等価ファントムは化合物ファントムであり、X線との相互作用が複雑になったことが原因で測定誤差が大きくなったと考えられる。
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