研究課題
今年度は、ESR線量測定法で用いるESR信号の取り扱いの技術的問題と甲状腺に取り込まれた放射性ヨウ素I-131から歯エナメルへの線量寄与係数を求めるための研究を行った。ESR信号の取り扱いは、比較的高線量(1Gy<)被ばくの場合、被ばくによる線量応答のあるCO2-ラジカル成分のピーク幅により被ばく線量を正確に求めることが可能である。特に福島及び長崎原爆(地上距離2km)で0.1Gy以下と推定される場合、通常のESR測定法では検出限界と考え評価できない被ばく線量である。0.1Gy以下の低線量領域になると歯エナメル有機物に起因する有機ラジカル成分ESR信号がノイズ(バックグラウンド)としてCO2-ラジカル成分ESR信号と重なり正確な被ばく線量を求めることができない。そこで我々は、日本電子社製ESR装置から得られるESRシグナル解析に利用できる「ESR Data Process」、「Isotropic simulation」ソフトを用いて、測定ESR信号より有機成分ESR信号を差し引く解析及びCO2-ラジカル成分・有機成分ESR信号のシミュレーション解析を行うことで、低線量領域の被ばく線量評価が可能であるという結果を得ることができた。長崎被爆者の抜歯試料は、地上距離2km以内の被ばく者の方々より提供を受けた抜歯試料についての線量評価を行い、その遮蔽状況に応じたパラメータ解析を行っている。また、福島原発事故の影響を受けたと考えられる福島県や周辺地域で提供を受けた抜歯試料についても解析を進め、被ばく線量評価を実施している。放射性ヨウ素I-131から歯エナメルへの線量換算係数は、甲状腺を線源として歯エナメルが受けると想定した場合、放射性セシウムCs-137や放射性コバルトCo-60と同等であると換算した。
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