研究課題/領域番号 |
15K08698
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
久保 均 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00325292)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分子イメージング / ナノパーティクル / MR / SPECT |
研究実績の概要 |
本年度は,有機シリカ粒子の生体内での分布を蛍光などの光イメージング,MRI,SPECTなどで観察することができるようにするためのマルチモーダル化について検討を行った. MRIに関しては,酸化鉄を含有させた様々な大きさの有機シリカ粒子の濃度を変化させたファントムを作成し,臨床用3Tおよび1.5Tの装置でT1およびT2緩和時間を定量測定するとともに,緩和時間と濃度との関係等を評価した.その結果,T1緩和時間は粒子サイズに依存せずほぼ一定であることが示され,T2緩和時間は濃度あるいは粒子数の増加に依存して短縮効果が増強することが示された.また,その短縮効果の増強度合いは臨床で使用されている酸化鉄造影剤であるResovistよりも強く,より強いT2短縮効果を示すことがわかった.SPECTについては,有機シリカ粒子表面のチオール基を利用してTc-99mを標識し,その特性等を評価した.その結果,粒子径によらず単位容積あたりの有機シリカ粒子数が少ないほど標識後の放射能は高くなり,標識率が向上したことが示された.また,標識した粒子をマウスに静脈投与してその投与30分後および2時間半後のSPECT画像を得た.30分後では肝臓と肺臓での放射活性が見られ,2時間半後では肺臓の放射活性は減少し,肝臓のは維持されていた.これには,粒子径による違いは見られなかった.甲状腺および膀胱に僅かの放射活性が観察されたが,生体内で標識が外れフリーのTcとなる可能性は低いと考えられた. また,Tc-99m標識製剤のSPECT測定における画像再構成法を最適化するために,Tc-99mテトロフォスミンを投与した心筋梗塞マウスの心筋梗塞サイズの評価を行い,MAP3D法を用いることで染色法による心筋梗塞サイズと非常に高い相関を得ることができることがわかった.今後のSPECT測定においては,本結果を元にMAP3Dを用いる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度までで,MRIでの有機シリカ粒子の信号特性評価,SPECTのためのTc-99m標識方法の確立およびその画像化を行うことができた.また,Tc-99m標識を行った有機シリカ粒子は蛍光色素であるローダミンを含有しているため,蛍光とSPECTのマルチモーダルイメージングを行うための準備ができたと考えている.しかし,Tc-99m標識の最適化まで行うことができず,まだ最も効率よく標識する条件を見いだせていない.また,最終的には抗体等も標識する必要があるため,50%標識量の同定も必要であるが,それも本年度に行うことができなかった.これらは,有機シリカ粒子の粒子径ごと,包含する物質ごとに行う必要があるものであり,非常に時間がかかることが理由の一つである.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの結果を基に,SPECT製剤とするためのTc-99m標識技術を向上させ最適化を行うと共に,抗体イメージングを行うための抗体標識技術の確立,Tc-99m標識との競合をうまくコントロールする技術の開発を行う.また,その結果標識された有機シリカ粒子のマウスにおける体内およびターゲットへの動態を評価し,抗体イメージングとして有効か否かの検討を行う.これらは,本研究計画立案時の研究推進の方向性に齟齬しないものであり,計画に基づいた実施ができていると考えている.平成28年度は実験を加速し,SPECT製剤として確立させると共に蛍光イメージングとのマルチモーダルイメージング剤としての評価を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が予定より少々遅れたために測定装置の使用料等に計画と比して余りが生じ,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
測定装置の使用料に使用する予定である.
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