研究課題/領域番号 |
15K08702
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
杉本 聡 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00373316)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自動治療計画 / ETC法 / 乳房術後照射 / Field-in-Field法 |
研究実績の概要 |
本研究では、高精度放射線治療における治療計画品質評価法、及び自動治療計画法の開発を目指している。当初の予定ではpDHV法とUncertainty Map法を治療計画の品質評価法、自動治療計画の際の目標の設定に使用することを想定していた。pDHV法を使用した半自動治療計画アルゴリズムは既に商用化されており既に多くの研究が発表されつつあること、Uncertainty Map法の計算時間が想定していたよりかかることが判明したため、自動治療計画に用いる手法を改めるべきと判断した。pDHV法、Uncertainty Map法は自動治療計画アルゴリムによって作成された治療計画の品質評価に用いることにした。 本年度は乳房術後照射の治療計画の自動化についての開発を進めた。乳房の照射の際には乳房全体に一様に放射線を照射する必要があるが、乳房は形状が複雑なため、単純な照射では線量の高い部分が生じ、有害事象の発生の可能性が高まる。本研究では一様な照射を実現する方法としてElectronic Irregular Tissue Compensation (ETC)法を採用した。ETC法では乳房の形状に合わせて放射線の強度を変化させるが、単純なアルゴリズムのため実際に線量計算を行うと線量の高い部分が生じてしまう。その線量の高い部分を特定し、その部分の線量を許容できる範囲まで下げるために必要な強度変化量を求める方法を開発した。その手法を、乳房の形を模したモデルをコンピュータ上で作成し、それに対して実際に適用することによって、半自動的に許容範囲まで線量を下げることができることを確かめた。また、同様の自動化のアルゴリズムを食道がんに対するField-in-Field法を用いた治療計画に適用することを試みた。これらの手法を実用化することにより治療計画にかかる時間の短縮、治療計画の品質の向上が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初pDVH法、Uncertainty Map法を用いた治療計画品質評価法、及び自動治療計画法の開発を目指していたが、pDHV法の商用化後、予想以上に多くの研究が発表され、pDVH法を用いるだけでは新規性がないと判断した。Uncertainty Map法に関しても計算時間の問題で直接用いるのは難しいことが判明し、新たな方向性を探る必要性があったため、全体として研究の進捗が遅れる結果となった。pDVH法、Uncertainty Map法に関しては自動治療計画法によって作成された治療計画の品質評価に用いることにし、比較的簡単な場合の自動治療計画法の開発に取り組むことにした。 今年度取り上げたElectronic Tissue Compensation (ETC)法、Field-in-Field (FIF)法はいずれも通常の照射法と強度変調放射線治療の間に位置するやや複雑な照射法であり、人の手で行うと時間を要し、作成者の技量により治療計画の品質も変化しうるものである。そのため、自動治療計画アルゴリズムの開発により治療計画の時間短縮、品質の向上が期待される。最終的には当初の予定どおり強度変調放射線治療のような複雑な治療計画の自動化を目指しているが、ETC法、FIF法で用いた方法の多くが同様に適用できると考えている。これらのやや単純な場合の自動治療計画法の開発に当初の計画より時間を要したのも進捗が遅れた要因である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は乳房術後照射のElectronic Tissue Compensation (ETC)法、食道照射に対するField-in-Field (FIF)法の自動治療計画法の開発を進めていく。Field-in-Field法に関しては食道照射と同様にFIF法が用いられることの多い全脳照射、乳房術後照射に対しても適用することを目指している。現在ところ自動治療計画を行うために必要なアルゴリズムの中心的な部分のみしか開発できていないが、最終的には標的決定後ほぼ人の手を介さずに自動的に治療計画を作成するシステムを目標として開発を進める。 強度変調放射線治療の自動治療計画法の開発には最近急速に発展してきている機械学習に基づいた方法を適用することを考えている。現在の人の手による強度変調放射線治療の治療計画では目的関数の調整を計算結果を参照しながら行っている。この目的関数の調整を機械学習に基づいた方法に置き換えることにより、自動的に最適な治療計画の作成ができるシステムの開発を行う。 治療計画の品質の評価には線量分布に関してはpDVH法に基づいたもの、不確かさに対する頑強性を評価するためにはUncertainty Map法を用いて行う。それぞれの部位、自動治療計画法に対して定量的な評価を行うことによって、それぞれの自動治療計画法の問題点を抽出し、改善点を検討し、より品質の高い、不確かさに強い治療計画を自動的に作成することができるシステムの開発を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1. 当初の予定より研究の進捗が遅れており、海外の学会での発表を行うことができなかったため。 2. ソフトウェアの購入が手続き上間に合わず次年度に持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
1. 昨年度購入ができなかったソフトウェアの購入を行うとともに、現在使用しているソフトウェアのライセンス維持料の支払いをする。 2. 国内の学会旅費(8th Japan-Korea Joint Meeting on Medical Physicsに抄録を登録予定) 3. 海外の学会旅費(American Association of Physicists in Medicine 59th Annual Meeting & Exhibition, USAに抄録を登録済; 17th Asia Oceania Congress of Medical Physics, Indiaに抄録を登録予定)
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