研究課題/領域番号 |
15K08707
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
合瀬 恭幸 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, リサーチアソシエイト (70519404)
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研究分担者 |
渡部 浩司 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (40280820)
林 拓也 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, ユニットリーダー (50372115)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 画像位置合わせ / マルチモーダル / PET / MRI |
研究実績の概要 |
本研究は、マルチモーダルマーカーを用いてPET画像やMRI画像といった異なるモダリティの診断画像の位置合わせに関する技術開発とその評価を目的とする。本年度は、マーカーを用いたマルチモーダル画像間の位置合わせに関する基礎検討を行った。異なるモダリティ画像上でもマーカーの重心同定することができ、また光学システムを用いた3次元計測にも対応可能な形状のマーカー容器と、複数のマーカー間の実測値が既知となる位置合わせ校正用ファントムを作製した。5つのマーカーを取り付けた校正用ファントムを用いて撮像実験を行った。光学システムによるマーカー位置の測定(Optic)を行った後に、MRI、CT、PET/Tx(トランスミッション)撮影を順に行った。マーカー座標5点をそれぞれの画像から計算し、既知の距離と比較することでマーカーの同定精度を評価した。MR画像とCT、PET/Tx画像の位置合わせを行い、位置合わせ後の画像間(MRIとCT、MRIとPET/Tx)のマーカー位置の差を位置合わせの精度として評価した。同時に、画像上でマーカー重心の半自動的同定方法と画像タイプに影響されないマーカーベースの位置合わせ法の検討を既存のソフトウェア(FSL)を用いて行った。その結果、マーカーの同定精度(n=10)は、0.44±0.33 mm(MRI)、0.15±0.06 mm(CT)、0.16±0.17 mm(PET/Tx)、0.31±0.24 mm(Optic)であった。位置合わせ精度(n=5)は、0.34mm(MRI と CT)、0.56 mm(MRI とPET/Tx)であった。また、マーカー溶液の密封化のためにマーカー容器の構造や密封剤の基礎検討を行い、6カ月以上の密封化に成功することが出来た。これまでの内容に関する発表を第5回核医学画像解析研究会(12月、東北大学)にて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マーカーを用いた画像の位置合わせの精度評価を行うことが出来た。その過程で、マーカーベースの位置合わせを半自動的に精度良く行うための基礎検討を行えた。 マルチモーダルコントラスト材の最適化およびマーカー容器製法の確立に関しては、現行のポリタングステン酸塩溶液以外の添加物の選定を今年度内に行う事は困難であったが、マーカー容器の最適な形状については位置合わせ法の基礎検討を通して把握することが出来た。また、3次元計測システムにて測定可能なマーカー容器を作製したことで、それぞれの画像上でのマーカー座標が3次元計測システムから得られたマーカーの位置情報と高精度で一致することを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
マーカー素材の最適化のためのファントム実験を引き続き行う。PET画像のように解像度の低い画像でも位置同定可能なマーカー容器の形状および大きさの検討を前年度の結果を踏まえ進めていく。マーカー溶液を長時間、安定的に密封する技術面の向上やマーカー製作にかかるコスト面の改善を行う、必要であれば他の方法の検討を行う。マルチモーダルマーカーのコントラストを評価するためのファントムや治具を作製し、コントラスト評価実験を行う。応用実験として、前年度の校正用ファントムを用いた実験よりも実際の使用に近い状況での位置合わせ法の精度検討を行うために、任意に複数のマーカーを張り付けたファントムを用いて位置合わせ精度評価実験を行う。また、マーカーを用いた画像位置合わせソフトウェアの開発も引き続き行う。前年度はマーカーの位置同定および位置合わせプロセスの半自動化のための検討を行った、より簡便かつ精度高良く行えるような専用のプログラムを開発する。ただし、ファントム撮像実験と位置合わせソフトウェア開発は検討・改良を繰り返しながら進めていく。そして、本システムの有用性の評価にために、実際に開発したマーカーを用いた位置合わせ法の評価を行うため、ソフトウェア的な従来法との精度比較を行う。応用研究として、サルを用いた撮像実験(PET、MRI)を行う。PET画像とMRI画像の間の位置合わせ精度を検討するために、特に、局所的に集積するPETトレーサー(例:脳における11C-racloprideや11C-PK11195など)を用いる。PET画像上の高集積部位が位置合わせを行ったMRI画像上で特定の部位と一致しているのか評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ライフサイエンス技術基盤研究センターにある動物用PET/CT装置の故障のため、27年度予定していたマーカー容器の形状および大きさの検討を行う実験の一部を中止した。これに伴って、実験に必要な器具・ファントムの購入を行わなかった。 光学システムに必要な解析用PC、赤外線対応USBカメラ等の購入を行わなかった。その代用として東北大学医工学科にあるPolaris(光学式トラッキング装置)を使用した。 東北大学での実験および分担者との打ち合わせに伴う出張が予定と比べ少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に行えなかった実験および打ち合わせを行う。マーカー容器の形状および大きさの検討に伴う器具・ファントムの購入を行う。東北大学での実験および分担者との打ち合わせの旅費として使用する。 また、マーカー実験に伴うマーカー溶液類の追加購入など、当初予定していた使用額では不足分を残りの額で補う。
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