研究課題/領域番号 |
15K08708
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研究機関 | 国立研究開発法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
吉田 英治 国立研究開発法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 主任研究員 (50392246)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PET / コンプトンカメラ / 3次元検出器 |
研究実績の概要 |
PET検出器はバランスのとれた非常に高い性能を有しているが、コンプトンカメラの手法を取り入れてガンマ線の相互作用位置をトラッキングすることで更なる性能向上が可能である。また、PET検出器による高感度シングルガンマイメージングが実現できればイメージング装置として様々な応用が期待できる。本年度は散乱部と吸収部からなる3次元PET検出器を想定し、モンテカルロ・シミュレーションによって3次元PET検出器によるコンプトンカメラ型PET装置の仕様を検討することを目的とする。コンプトンカメラでは高いエネルギー分解能を必要とすることから、散乱部に6 mm厚の半導体検出器であるSi、吸収部に20 mm厚のGAGGシンチレータを想定した。吸収部のリング径を従来のPET装置と同等の80 cmとした。コンプトンカメラでは検出器が被験者に近いほど高い空間分解能が得られることから散乱部のリング径は40 cmから70 cmの可変とした。シミュレーションの結果からコンプトンカメラで利用出来る散乱部でコンプトン散乱し吸収部で光電吸収した事象(コンプトンカメラモード)はPETの同時計数事象(PETモード)に比べて倍近い検出効率が期待できることが分かった。次に逐次近似型の画像再構成をコンプトンカメラで利用出来る事象、PETで利用出来る同時計数事象それぞれに適用した結果、散乱部にSiを用い、40 cmのリング径の場合でコンプトンカメラの空間分解能は約5 mmであり、生体イメージングに十分利用可能な性能が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンプトンカメラ型PETの仕様を検討するためにモンテカルロ・シミュレーションを実施した。吸収部はGAGGシンチレータ(2.9 mm x 2.9 mm x 20 mm)を用いたリング径80 cmの検出器リングからなる。コンプトンカメラでは散乱部のリング径は被験者に近いほど高い空間分解能が得られることから散乱部のリング径は40 cmから70 cmの可変とした。 散乱部の検出器はGAGGシンチレータ(2.9 mm x 2.9 mm x 6 mm)とSi半導体検出器(0.5 mm x 0.5 mm x 6 mm)の2種類を検討した。本年度はコンプトンカメラモードとPETモードは分けて処理を行った。NEMAで規定された円柱ファントムを模擬した結果、PETモードに比べてコンプトンカメラモードは約2倍の感度が得られた。得られたデータに逐次近似型の画像再構成を適用し、点線源による分解能を評価した。PETの空間分解能は視野内で一様に約2 mmであった。一方でコンプトンカメラモードの空間分解能は線源位置及び散乱部のリング径に大きく依存した。線源が検出器に近く、散乱部のリング径が小さいほど高い空間分解能が得られた。散乱部にSi半導体検出器を用いてりんぐ径が40 cmの場合、約5 cmの最も良い空間分解能が得られた。GAGGを散乱部に用いた場合はSiに比べて3倍程度空間分解能が悪くなった。
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今後の研究の推進方策 |
積層型トラッキング検出器のプロトタイプを開発する。吸収部は放医研で開発した4層DOI検出器の技術を用いることで開発にかかる時間を短縮する。今年度作成したモンテカルロ・シミュレータを用いてより効率的なデータ処理方法を検討する。また、コンプトンカメラモードとPETモードを融合した画像再構成法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
モンテカルロ計算用ワークステーションを購入予定であったが、本年度は大規模演算を行わなかったので来年度に持ち越した
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次年度使用額の使用計画 |
モンテカルロ計算用ワークステーションを購入し、画像評価用の大規模データを生成する
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