研究課題/領域番号 |
15K08709
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研究機関 | 国立研究開発法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
錦戸 文彦 国立研究開発法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (60367117)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | IVR / リアルタイム線量計 |
研究実績の概要 |
本年度はリアルタイム線量システムにとって、最も重要となるX線検出器単体の試作・評価を行った。本検出器はX線透視画像に検出器が写りこまずに線量を定量的に測定する必要がある。そこで検出器はプラスチックシンチレータ上に有機フォトダイオードを直接作成したシンチレーション検出器と、フレキシブル極薄基盤を用いた読み出しシステムからなる。有機フォトダイオードはプラスチックシンチレータ上にIZO電極(100μm)をスパッタリングで作成した後、P3HT(p)とPCBM(n)の混合物をスピンコート塗布し(200μm)、最後にAl電極(70μm)を真空蒸着によって作成する。中央の6mm×4mmの部分が、プラスチックシンチレータからのシンチレーション光に対して感度を持つ部分であり、その両側の部分に読み出し用の電極となっている。薄型のフレキシブル基盤の厚みは50μm以下であり、また構造も柔軟性が高くなっており、伸縮性のある装具に取り付けての使用が可能となる。1つの基板に対し3つの素子を取り付けることが可能である。素子の評価は小動物CTの透視撮像モードを用いて行った。実験では管電流や管電圧の値を変化させながら出力電流の測定を行った。その結果、1秒間のリアルタイム測定で十分な出力信号をえることができ、加えて管電流・管電圧の変化に対する応答特性も十分であるという結果が得られた。また、X線透視画像を見ても透過性は十分であり、多数の検出器を並べても問題ないという結果が得られた。開発した検出器は目的とするIVR用リアルタイム線量計測システム用の検出器として有効であると結論できる。これらの結果をもとに検出器の多チャンネル化を進め、リアルタイムの線量位置分布の取得を目指す。ただし出力電流の向上や基板や電極のコンタクトの方法などいくつか改善の余地がある部分もあるため、今後も検出器の改良は進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画では1chでのX線検出器の設計・開発・評価であった。上記の通り本年度の目標であるX線に透過性のある検出器の開発・評価を行い十分な結果を得ることができているため、予定通り研究は進んでいるといえる。また、次年度の多チャンネル計測システムの作製の目処もたっているため、おおむね順調であると評価をした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果をもとに検出器の数を増やして位置分布を得ることを目標とする。そのために必要となる解決すべき課題は主に以下の通りである。 1.多チャンネル化に対応したフレキシブル基盤・読み出し回路などの改良 : 現在の薄型フレキシブルは基礎実験用の設計になっており、例えば読出し電極などに銀ペーストなどでケーブルを接続するようになっている。多チャンネル測定を行うためにはケーブルとの接続は速やかに行える必要があるため、コネクタを用いるように修正を行う。このような改良をいくつか行い最終版に近づける。また、現在は電流計を用いてデータの収集を行っており、これも一般的なADコンバータでも読み出せるようにするためにアンプなどの作製も行う必要がある。 2.X線検出器の性能の向上 : 現在でもX線検出器はX線透過であり・出力信号もリアルタイムに取得可能であるとの結果が得られている。しかしながらデータの定量性を高めるためには、より良い性能を持つ検出器を使用することが望ましい。特に有機フォトダイオードの性能向上のアイデアはいくつか挙がっており、まだ性能向上の余地はあると考えられる。加えて薄型フレキシブル基板も信号出力が改善するよう最適化を行っていく予定である。 3.データ収集・表示ソフトの開発 : 現在の測定システムは電流値をリアルタイムにグラフ化するだけのものであり、リアルタイムに位置分布を表示しているとは言えない。そこで複数のチャンネルの読み出しをリアルタイムに表示するためのソフトウェアの開発も行う。 これらの改良・開発を行い、リアルタイムの多チャンネル読出しを実現することを本年度の課題とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初期に作成した試作検出器が年度内一杯もったため、当初予定していた改良版試作検出器の設計・作成を次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
前述の通り改良版試作検出器の作成に使用する。
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