研究実績の概要 |
これまで心筋梗塞やがんに焦点を当てたPheWAS解析を行ったが、本年度(最終年度)は脳血管疾患(脳出血、脳梗塞、血管性痴呆症など)のPheWAS解析を検討した。痴呆症の既知疾患感受性遺伝子としてGWASで同定されているTOMM40遺伝子とAPOE遺伝子から遺伝子多型を選出し、脳動脈狭窄指数(ICAI)等の病理フェノーム情報や神経病理データとの関連をPheWAS法で解析した。遺伝子多型はAPOE遺伝子では痴呆症のリスク因子として有名な3つのイプシロン(ε) アレルε2, ε3, ε4を判定するのに使われるrs7412多型を含む6個のSNVを解析した。TOMM40遺伝子はAPOE遺伝子多型イプシロン(ε) アレルとの遺伝子-遺伝子間の関連が知られているポリT多型のCNVを解析した。候補遺伝子のSNVとCNVは約2300検体の日本人連続剖検例から得たDNAを使って、TaqMan SNP Genotyping Assay及びTaqMan CNV Assay、あるいはexome-chipによりジェノタイプ型を判定し、病理フェノーム情報等と結合して、統計解析用データセットを作成し、SAS統計解析ソフトウェアを用いて、Chi-square test, Fisher test, ANOVA, logistic regression等により各多型とフェノーム情報との関連を解析した。その結果、本研究で用いた日本人高齢者剖検例集団においてrs769449多型が痴呆症と統計学的に有意な関連がみられた。しかしながら、脳動脈狭窄指数(ICAI)とは統計学的に有意な関連はみられなかった。APOE遺伝子イプシロン(ε) アレルを判定するのに使われるrs7412多型は、本研究集団においては、痴呆症と統計学的に有意な関連はみられなかった。その他の多型については、痴呆症と統計学的に有意な関連はみられなかった。
|