本研究では、世界的規模の気候変動や地域的な気象変化と感染症の流行、死亡状況、救急搬送といったアウトカムとの関係について、福岡県だけではなく日本全国をフィールドとした解析を行い、世界的規模の気候変動による健康影響への適応策に資する科学的知見を明らかにすることを目的とする。本研究を実施することにより、世界的規模の気候変動と地域的な気象変化による健康影響を予測するためのより正確な統計モデルの開発や、公衆衛生行政における疾病管理や予防対策のための早期探知による警報システムの構築に寄与できると考えられる。 平成29年度については、平成27年度から平成28年度にかけて構築してきた、気候変動、気象変化、感染症、死亡、救急搬送、病院外心肺停止に関する全国規模の大規模データベースのデータを用いて、データの統計学的解析、結果のとりまとめ、得られた知見の整理、英文原著論文をはじめとした研究成果の発表、をそれぞれ行った。 データ解析と結果のとりまとめについては、これまでに整備したデータベースのデータのうち、世界的にも知見がほとんど限られている救急搬送や病院外心肺停止に着目し、非線形性を考慮した一般化線形モデルをはじめとした時系列解析モデルを用いて、異常気象、大気汚染、放射線といった気候変動によって救急搬送や病院外心肺停止のリスクがどの程度上昇するか、季節性や長期変動のバリエーションがみられるか、地域異質性がどの程度みられるかどうかについて、定量的に明らかにした。 なお、本研究で得られた知見と研究成果については、国際的な学術雑誌に英文原著論文を10編発表した。また、European Public Health Conferenceをはじめとした国際学会での発表や、ホームページなどを活用することによって、研究成果に関する情報発信を積極的に実施した。
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