研究課題/領域番号 |
15K08715
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西坂 麻里 (小西麻里) 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (00448424)
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研究分担者 |
山村 健一郎 九州大学, 大学病院, 助教 (30532858)
半田 早希子 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (40745197)
樗木 晶子 九州大学, 医学研究院, 教授 (60216497)
安藤 眞一 九州大学, 大学病院, 特別教員 (90575284)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会医学 / 臨床疫学 / ダウン症候群 / 睡眠時無呼吸症候群 / 多人種比較 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はダウン症候群(DS)児を対象に睡眠呼吸障害(SDB)有病率及び治療実態を調査し、解剖学的形態の異なる他人種と比較して我が国のDSのSDBの特徴づけを行い、治療指針確立の一助とすることである。進捗と2年目の状況変化に応じ計画を変更し、結果の解析及び詳細検討に費やした。現在論文執筆中である。 ①対象:本邦及びScotlandのDS児と非DS児。②方法:療育者を通じたアンケート調査及びスクリーニング③統計的解析・検討:有病率推定、心疾患既往や解剖学的要因との関連検討、二国間比較解析
初年度は計画通り、同年代のDS児と非DS児を対象に、アンケート調査161名、57名スクリーニング検査を終了。しかし本年、研究代表者の異動及び調査協力者の予定外退職が生じ、若年者対象の調査が継続不能となった。本邦での計画停滞に対しScotlandの共同研究施設では調査期間が終了した。当初計画を大きく変更し、まずは若年者に限定しない我々の並行研究で得た調査結果を用いて、16歳以上の調査対象者の二国間比較をまとめつつ、若年者対象調査の継続手段を整える方針とした。5000人超の日本ダウン症協会員からランダム抽出した2000人にアンケート協力を要請し60%相当1154人分の有効回答を得た先行研究から16歳以上の490人の調査結果を比較対象として解析を行った。Scotlandでのアンケートは16歳以上244名分の調査対象者から有効回答を得た。 この比較では、ScotlandのDS者で肥満傾向が有意であったにも関わらず、両国同程度の高頻度でSDB関連症状が確認された。これは、DSに伴う解剖学的特性が人種やBMIの差を凌駕してSDBを惹起する可能性を示唆している。 同様の傾向が16歳未満のDS児でも認められるか明らかにすべく、当初2年目に予定していた調査を最終年度に行うよう調整中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述の通り、想定外の研究代表者の異動及び研究協力者の退職に伴い、予定通りの調査研究遂行が困難となった。一旦若年者対象の調査を中断せざるを得ない状況となり本邦での若年者対象の検査が滞り、計画から遅れた展開となっている。また共同研究施設であるScotlandでも想定外に調査が先行したことで調査期間が終了となった。 これらを踏まえて、改めて研究継続の方法を模索した結果、我々の調査対象のうち本来の比較対象としていなかった16歳以上を抽出しての二国間比較が可能であり、有意義な知見が得られた。16歳以上を対象とした比較において、有意に肥満傾向の強いScotlandのDS者と同程度に本邦のDS者でも高頻度にSDB関連症状が確認された。まずはこの結果を論文の形で発表する準備を整えつつ、本来の目的である若年者対象の調査継続のために手段を整えるべく調整を行っている。 本来の研究対象を主体とした結果ではないものの、その研究の布石となる有意義な知見が得られ、既に論文として発表の段階に至った点は計画以上の進展と考えている。
~以上、本邦の調査状況に関しては大幅に遅れているものの、共同研究施設での調査が終了し、当初予定していたよりも大幅に先んじて、想定外の論文発表準備が整った。3年間の研究期間と現状での達成状況を鑑み、本研究全体の進捗としては概ね計画通りと判断し、残る1年で、当初2年目に予定していた本邦での若年者対象の調査を進めるべく今後の計画再調整を試みている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の3年のうち2年を終了し、アンケート回収、スクリーニング検査開始には至ったが、予定していた本来の調査対象者である16歳未満の若年者での予定回収数と検査の完了には至っていない。対し、本来の調査対象者を主体とした結果ではないものの、本調査過程で得られた別結果が副産物と言いうる形で論文発表の準備段階にまで至っている。 主に2年次及び3年次に計画していた海外学会参加及びScotlandの施設訪問を行い、3年分として計画していた旅費の大部分をこの2年で使用する結果となったが、今回の計画変更により、計画に先んじた副論文の準備が可能となった。本邦での調査進捗遅延を考慮しても研究計画全体としての進捗は、概ね計画通りと判断しうる状況である。 当初の計画を変更、再検討する必要が生じた主因たる代表研究者の異動と研究協力者の退職での研究従事人員不足の状態に、現状では変化はない。 予定計画からの遅延については、今後も人員確保の努力を継続し、当初予定の調査の完遂を目指すが、中断を余儀なくされる可能性も否定できないと考えている。また、現在までに得られている調査結果を無駄にしないよう、並行して解析を進める所存である。
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