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2015 年度 実施状況報告書

若年胆管細胞癌の遺伝的な発症リスクの検証

研究課題

研究課題/領域番号 15K08716
研究機関大阪市立大学

研究代表者

川村 悦史  大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (60419710)

研究分担者 河田 則文  大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (30271191)
久保 正二  大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (80221224)
村上 善基  大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (00397556)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード胆管細胞癌 / 若年胆管細胞癌 / 印刷会社 / 代謝酵素 / 遺伝子発現異常 / 遺伝子 / micro RNA / mRNA
研究実績の概要

胆管細胞癌は、早期診断が難しく、術後5年生存率は22-44%と予後不良な疾患である。平成24年に大阪市内の印刷会社で起こった化学物質による若年胆管細胞癌に関する報道がなされた。我々は、印刷所胆管細胞癌の発症原因は化学物質の代謝過程にあり、代謝酵素の働きには遺伝的な個人差があると考えられる。胆管細胞癌の発症機序を解明する上で印刷所症例と非印刷所症例の比較は有用と考えられる。我々は、平成27年度より若年胆管細胞癌の発症リスクに関して印刷所胆管細胞癌症例を含む肝組織および血清を検体とする解析、(1)若年胆管細胞癌の診断マーカー探索(RNAマイクロアレイによる網羅的解析)、(2)(1)の結果のうち化学物質の代謝酵素と関連するRNAの定量的解析(若年胆管癌細胞の発症機序の推定)を行なうこととした。
平成27年度終了時、若年胆管細胞癌におけるRNA(mRNAおよび、これを制御するmicroRNA)のマイクロアレイを行ない、遺伝子発現異常に関して解析を行なっている。
今後の方針として、発現異常のみられる代謝酵素と関連するmRNAおよびmicro RNAの定量的PCR解析および同定した代謝酵素の機能解析を行なう(平成28年度)。平成29年度は、発現異常が予想される代謝酵素に関連するmRNAおよびmicro RNAと発癌リスクの関係を年齢階層別に解析する予定である。以上から若年胆管細胞癌と関連する遺伝的リスクを抽出する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

印刷所胆管癌の原因化学物質とされるジクロロメタン、1,2-ジクロロプロパンのうち前者および後者(の類似物質)はヒトの胆管上皮細胞に分布する薬物代謝酵素glutathione S-transferase theta 1(GSTT1)により解毒されると考えられている。我々は、GSTT1の遺伝子型のうち非活性型(genotype null)では胆管癌は発症しない、という仮説を立てた。平成27年度、我々はJSPSに助成頂いた基金を用いて若年胆管細胞癌の発症リスクに関する研究を開始した。我々は前述の若年胆管細胞癌のうち当院において外科的切除された組織検体を保管しており、利用可能である。これらを用い、当初の仮説を検証する為、原因と考えられる化学物質の代謝酵素の遺伝子多型を解析する予定であった。しかし解析に要する検体数を学内の推計学教室協力のもとに算出した結果、利用可能な検体数が必要なサイズに満たなかった。そこで我々は、genotypingアッセイの代わりにRNAのマイクロアレイ解析を検体数を絞って行うこととした。(in vivoの方法)保管する肝組織検体において可能な解析として、(1)若年胆管細胞癌の診断マーカーとなるRNAの探索(mRNAおよびmicro RNAのマイクロアレイによる網羅的解析)、(2)(1)で得られる結果のうち化学物質の代謝酵素mRNAの定量的解析(若年胆管細胞癌の発症機序の推定)を行なうこととした。
平成27年度、若年胆管細胞癌症例の胆管上皮における化学物質のmRNAのうち発現異常(亢進、減弱)を呈しているものを同定する。
平成27年度、24例の肝腫瘍[胆管細胞癌10例(うち4例が印刷所症例)、対照として肝細胞癌10例および良性胆道腫瘍4例]の全検体から得たRNA抽出液を2分した。これを前述(1)のmRNA、micro RNAのマイクロアレイ用の検体とした。現在、micro RNA、mRNAのマイクロアレイの結果を基に若年胆管細胞癌における遺伝子発現異常に関する解析を行なっている。

今後の研究の推進方策

平成28年度以降、発現異常のみられるRNA(mRNAおよび、これを制御するmicro RNA)の定量的PCR解析および、これらRNAの関連する代謝酵素の機能解析(超高速液体クロマトグラフィー質量分析)を若年胆管細胞癌の肝組織検体を用いて行なう(平成28年度)。平成29年度は、発現異常がみられる代謝酵素と関連するRNA(mRNAおよび、これを制御するmicro RNA)と胆管細胞癌の関係を年齢階層別に解析し、若年胆管細胞癌を規定するRNAマーカーの抽出を目指す。若年胆管細胞癌症例の血清検体においても同様に、RNAマーカーの抽出を目指す。
(発現異常がみられる代謝酵素と関連するRNAの検証)我々は、in vitroの方法として分化度の異なるヒト胆管癌細胞株に対して若年胆管細胞癌の発症に関連すると考えられるmicro RNAのノックインあるいはノックアウト(対象となるmRNA発現の検証)またはmRNAあるいは、これを制御するmicro RNAを用いた遺伝子導入(正常胆管細胞の誘導の検証)を行なう。
(臨床応用について)本計画の実験および解析により若年胆管細胞癌の遺伝的リスク(mRNAおよび、これを制御するmicro RNAの発現異常)を反映する血清マーカーとなるものが抽出できていれば当院の胆管細胞癌検診外来および肝胆膵内科(当科)外来、同外科外来において採血を行ない、胆管細胞癌発症の高リスク症例の拾い上げに用いる。高リスク症例に対しては胆管細胞癌スクリーニングを強化する。

次年度使用額が生じた理由

若年胆管細胞癌の腫瘍組織および血清の遺伝子発現解析として外部検査会社に依頼した。外部検査会社より連絡があり、腫瘍組織から得た遺伝子抽出液の状態が悪いとのことであった。このため、遺伝子発現解析をする前に検体の状態(具体的にはRNAの分解の程度)を評価する追加実験を行うこととなった。これは想定外の行程であり、予定していた遺伝子発現解析後の酵素機能解析の計画に遅延が生じた。結果として酵素機能解析に必要な物品の購入をしなかったため、27年度の実支出の減額および28年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

現在、外部検査会社からの遺伝子発現解析の結果をもとに遺伝子発現異常を統計学的に抽出している。
抽出が完了し次第、27年度に遂行できなかった有意な遺伝子と関連する酵素の機能解析を行なう予定である。酵素機能解析には当施設内に設置している超高速液体クロマトグラフィーを用いる予定である。そこで新たな物品として検査試薬が必要となる。この試薬は27年度に購入予定であったものであり、持ち越した金額を用いる予定である。

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公開日: 2017-01-06  

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