研究実績の概要 |
IgA腎症の多施設コホートは2,000例近いデータの収集が行われ、外れ値や欠損値の補完も含めたデータベースのブラッシュアップを行った結果、最大規模の長期IgA腎症コホートを作成することができた。今回得たデータ収集のノウハウは今後さらに発展可能であるが、新臨床研究法に合致したデータの質の保証体制や、ITを用いた情報収集に適応した体制の構築が求められる。 本年度は研究計画の最終年度であり、得られたデータベースの解析を中心に行った。 現在IgA腎症の治療において重要な臨床課題としては、①IgA腎症の予後の時代推移、②IgA腎症の治療法としてわが国で広く行われているが世界的に認められていない扁桃腺摘出+ステロイドパルス療法(以下TSP)は有効か、③IgA腎症における治療効果判定の予測因子は何か、の3点がある。今回の研究により①IgA腎症は時代とともに治療効果が改善していること、②腎機能が良好で蛋白尿が多い群でTSPは他の治療法に比べて有用な可能性があることを報告し(Hoshino J, et al,, Clin Exp Nephrol 2016)、さらに③CKDG4の腎機能低下例においても蛋白尿が多い(≧0.5g/gCre)場合はTSPの予後が良好であることを報告した(日本腎臓学会総会2017)。そのほかにも、④TSPのステロイドパルスを3回施行した方が3回未満よりも予後が良く、傾向スコアにて患者背景を補正しても同様の結果であること(Clin Exp Nephrol in revise)、⑤2年後の尿所見の寛解が複合腎アウトカム(eGFR50%減少または透析導入)と相関していること (Renal Week 2016にて学会発表、現在英語論文化作業中)の5つの研究成果を報告した。 今後はこれらの研究結果をもとに介入研究等にて仮説検証を行い、実際の患者診療に役立てていきたいと考えている。
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