研究課題
ミャンマー、ネパール、タイの東南アジア3カ国から得られた多剤耐性結核菌の遺伝子解析より、いずれの国においても薬剤耐性度が上がるにつれ、特定の系統「北京型」が優勢となる現象が観察された。また、これらの株はゲノム上の点変異(基準株における位置:1477596)により、モダン型と呼ばれるグループに属することが示された。ミャンマーの多剤耐性北京型株を用いたMLVA解析により、モダン型のクラスター(同じ遺伝子型を持った株の集団)形成率が高く、また、超多剤耐性の前段階(pre-XDR)であることを示唆するキノロン耐性に係るgyrA上の変異や、薬剤耐性変異によって損なわれた酵素活性を補完していると考えられる二次変異(リファンピシン耐性株に見られるrpoC上の変異)の検出率も、モダン型のクラスターを形成している群において有意に高いことが判明した。これらの国の北京モダン型MLVA解析結果より、系統樹の中心に位置する型、即ちその国に最初に侵入した蔓延株の原型は、この3国間で近似しているのみならず、現在、ロシアや東ヨーロッパ、中央アジアにて蔓延している多剤耐性結核菌株とも非常に近縁であることが示された。更には、これらの株は一様にイソニアジド耐性に係る特定の変異(KatG-S315T)を持ち、また、ストレプトマイシン耐性に係る特定の変異(RpsL- K43R)を保持していた。これらの変異の圧倒的な存在比は、日本の北京型株(非モダン型)や、他の系統の多剤耐性結核菌においては観察されなかったため、特定の生存に有利な変異を獲得した株が、これらの薬剤耐性という性質を保った状態で蔓延していることが示唆された。スリランカの肺科病院において結核初発患者から分離された85株の遺伝子解析を行ったところ、薬剤耐性株の割合は低く、北京型の割合は24%であったが、そのMLVA型は上記の蔓延株とは異なった。
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