研究課題/領域番号 |
15K08725
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 昭彦 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (60375045)
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研究分担者 |
石田 孝宣 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (00292318)
鄭 迎芳 東北大学, 医学系研究科, 助教 (60724036)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 乳がん検診 / マンモグラフィ / 超音波 / J-START / Dense Breast |
研究実績の概要 |
マンモグラフィによる乳がん検診は死亡率減少に関するエビデンスが確立され、50歳以上の年代においては定期的な受診が推奨されている。その一方で49歳以下の年代では乳腺濃度が高いこと(Dense Breast)に起因する不利益が大きいために、総合的な利益は十分とは言えない。我々は40代女性ではマンモグラフィ検診のがん発見の感度が71.4%であり、50代、60代と比較して有意に低いことを論文として報告し、Dense Breast対策として超音波検査の有効性に関する研究を続けている。 超音波検査はマンモグラフィと比較して高濃度乳房での小腫瘤の診断力が高く、マンモグラフィの弱点を補う手段として期待される。我々は、我が国初の大規模な無作為化比較試験「がん対策のための戦略研究:超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験(Japan strategic anti-cancer randomized trial, 以下J-START)」の事務局を運営しており、その主要評価項目に関する論文をThe Lancetに報告した。がん発見数・発見率は介入群で184件(0.50%)、コントロール群で117件(0.33%)であり、有意差をもって介入群で高かった。中間期乳がんは介入群で18例、コントロール群で35例の報告があり、有意差をもって介入群で低かった。乳がん発見感度は介入群91.1%、コントロール群77.0%となり、介入群で有意に高かった。一方、検診における特異度は介入群で87.7%とコントロール群の91.4%と比較して有意に低下しており、不利益の増大が懸念される結果であった。 現在、超音波導入による検診成績の差が、マンモグラフィの限界であるDense Breastに起因するものなのか検証するために、マンモグラフィの画像所見の詳細な検証と超音波発見乳がんの特徴に関して研究を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
J-STARTは全国42の検診施設の協力の基に行われ、およそ76,000名の参加を頂いた大規模試験であるが、施設によっては画像の保存年限が経過しており、全ての症例に関する検証は現実的ではない。次善の策として我々がマンモグラフィや超音波所見の読影に参加した宮城県対がん協会の画像データ11,442症例に関して画像所見の再検証を行うこととし、研究を進めている。平成28年度末までに11,442症例全ての乳房構成に関する再評価を終えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年からは、上記の再評価した乳房構成を基に、発見がんと乳房構成との関連、乳房構成とがん発生率との関連、超音波検査の有効であった症例の乳房構成との関連などを検証し、論文発表する計画である。 さらに超音波画像のコンピュータによる診断支援システムに関しては、静止画像の自動計測に関するプロジェクトが緒についたところであり、今後さらに発展させてゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
マンモグラフィ及び超音波画像の収集が進まず、収集のための費用、謝金がかかっていないため。対がん協会での画像解析は対がん協会での設備を利用しており、今年度読影した11,442件の画像に関して費用が発生していない。
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次年度使用額の使用計画 |
対がん協会の画像データは極めて重要な資料であり、データの提供を受け保存できる体制を整える。 超音波データの解析を進め、ソフトウエア開発に関する調査をすすめるため未使用金を使用する予定である
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