研究実績の概要 |
J-STARTは全国42の検診施設の協力の基に行われ、およそ76,000名の参加を頂いた大規模試験であるが、施設によっては画像の保存年限が経過しており、全ての症例に関する検証は現実的ではない。次善の策として我々がマンモグラフィや超音波所見の読影に参加した宮城県対がん協会の画像データ11,442症例(通常のマンモグラフィ(MG)検診を受けるコントロール群;5,655名、MGに超音波を加えて検診を行う介入群;5,783名)に関して画像所見の再検証を行った。マンモグラフィ所見から受診者の乳房構成を4段階(極めて高濃度、不均一高濃度、乳腺散在、脂肪性)に分類し、それぞれから発見された乳がんの所見、発見契機を検証した。高濃度乳房の割合は介入群、コントロール群ともにおよそ60%であり、有意差を認めなかった。発見がん数はコントロール群で28例(がん発見率0.49%)、介入群で55例(がん発見率0.95%)であった。中間期がんはコントロール群、介入群でそれぞれ11例、3例であり、これらを基に算出される検診の感度はそれぞれ71.8%、94.8%であった。乳房の構成別では乳腺散在または脂肪性の乳房では検診発見がん数、中間期がん数がコントロール群で13件と3件、介入群で19件と2件であり、有意差を認めない。一方、不均一高濃度以上のいわゆる高濃度乳房においては検診発見がん数、中間期がん数がコントロール群で15件と8件、介入群で39件と1件であり、有意差をもって介入群でのがん発見率が上昇していた。今回の検討では超音波検査の追加により、特に高濃度乳房での乳がん発見率が大幅に改善することが示され、超音波がMGの弱点を補助的に補える検査法であることが示された。
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