研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder, ASD)を生じうる乳幼児は多く存在し、その一部は顕在化せず次第に適応の範囲に入っていくが、一部は顕在化してASDという形での発現をするとの考え方に基づくと、ASDが昨今急増しているのは、従来は適応の範囲に入り問題とならなかったケースが、現在の複雑な生活環境の問題などによって多くが顕在化するようになっている可能性がある。自閉傾向の危険因子を自閉症スクリーニング質問紙に組み入れれば、自閉症傾向をより早期かつ確実に発見することが可能になるものと考えられる。申請者らは、自閉症傾向には、アレルギー症・栄養摂取状態・生活習慣が密接に関連しているとの仮説のもと研究を進めてきた。 平成27年度は、石川県内の小学校・中学校に通う6-15歳の約1,476人の児童生徒を対象(回答者1,414人、回答率95.8%)とした自閉症傾向・アレルギー・栄養摂取状態・生活習慣に関するコホート調査データを元に横断的な解析を実施した。その結果、小学校低学年児において、栄養不足が自閉症傾向の有無と関連する可能性が示唆されたが、小学校高学年以上においては関連を認めなかった。栄養不足と自閉症傾向との関連は観察されるが、年齢とともに解消していく可能性が示された。 平成28年度は、3-6歳の417人の幼児を対象(回答者399人、回収率95.8%)に横断的に解析したところ、アトピー性皮膚炎と自閉症傾向、および喘息と過体重との関連性が確かめられた。 平成29年度は、6-15歳の小中学生のデータをもとに横断的に解析したところ、栄養摂取状態と生活習慣との有意な関連が示され、偏り行動間の関連性が明らかとなった。 これらの成果により、申請者らの仮説と合致する知見を得ることができた。
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