研究課題/領域番号 |
15K08733
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 知美 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (60363371)
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研究分担者 |
中村 剛 中央大学, 理工学部, 客員教授 (80039586) [辞退]
世良 耕一郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00230855)
森 弘行 長崎女子短期大学, その他部局等, 教授 (30128227)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PIXE / 測定誤差 / アトピー性皮膚炎 |
研究実績の概要 |
本研究は、福岡市乳幼児健診事業の一環として開始した、生後10か月時点におけるアトピー性皮膚炎の発症と生後または産後1か月の母子の毛髪中のミネラル量の因果関係調査(初期調査)の継続的研究である。6年後の追跡調査では、1人につき2回の測定を行い、測定誤差(個人内変動)の大きさと原因を検討してきた。proton-induced x-ray emission (PIXE) による毛髪ミネラルを疫学的リスク推定に有効に用いるためには、測定値の個人内変動と個人間変動を量的に評価することが必須であり、そのためには毛髪を2箇所採取して独立に測定されたミネラル計測値が必要となることが分かった。そこで本研究では、生後または産後1か月時点に採取した毛髪の残余検体を利用することにより、初期調査で構築した予測モデルの改良を行う。 長崎女子短期大学にて管理している、初期調査の残余毛髪の中から、本研究の対象となる(6年後の追跡調査への参加母子209組の)毛髪を選び出し、アルコール消毒後、プレートに貼り付けてPIXE測定用標本を作製した。作製した検体は、岩手医科大学サイクロトロンセンターに送付し、PIXE分析を用いて、32種類のミネラル濃度の計測を行った。 生後1か月の乳児の毛髪は、少量で、細く、短いため、測定用の検体作製が困難な症例もあった。そのような毛髪から得られた測定値の精度が懸念されたため、目標の半分(209例について2検体ずつ測定予定中の1検体)の計測を終えた段階で、PIXE測定値の信頼性に関する検討を行った。試料の目視およびスペクトルとの比較により、PIXE測定値の信頼性を4段階(信頼性が高・中・低・要注意)に分類した。 信頼性が低いまたは要注意となった毛髪は、乳児が39検体、母親が5検体であった。残余毛髪が0本のため測定不能であった乳児5例と合わせて除外し、本研究の解析対象を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
合計836個(母子209組×2回)の毛髪検体を測定する計画であるが、生後1か月の乳児の毛髪は、少量で、細く、短いため、1検体目の測定を行った段階で、測定値の信頼性に関する検討を行った。2検体目は、初期調査時に作製したプレートを再利用することを計画していたが、照射による損傷が大きな検体もあり、対処が必要であった。慎重な検討を重ねながら遂行しているので、測定が遅れている。しかし、乳児の毛髪量に関する問題への対策は検討済みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、2検体目のPIXE計測を終了し、初期調査のデータと統合して統計解析を行う。 まずは32種類のミネラルそれぞれについて、2回の測定値の差を分析し、ミネラル毎の特徴を明らかにする。得られたミネラル量の測定誤差について、これまで取り組んできた予備的検討の妥当性を検証すると共に、測定誤差を考慮した方法でアトピー性皮膚炎の発症予測モデルの改良を試みる。 2回の測定データを用いることにより、より精度の高い統計モデルを構築できることが期待される。しかし一方で、乳児の毛髪量の問題から解析対象症例数が減ってしまったこと、加えてアトピー性皮膚炎の発症率は10%未満と低いことから、検出力不足が懸念される。たとえば残余毛髪量が十分な乳児の症例追加や目的変数の再考など、研究計画の変更も考慮に入れながら、必要な対策を講じていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
乳児の毛髪状態(少い・細い・短い)及び初期調査時の検体プレートの損傷等に起因し、PIXE計測値の信頼性への対策を講じながら進めているため、計画がやや遅れている。今年度予定していた毛髪検体測定にかかる費用が次年度に必要となる。
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次年度使用額の使用計画 |
大量のデータ解析作業の補助や、試料及び資料の整理等を行う研究補助員に対して費用を支払う。共同研究者が大阪・長崎・岩手と離れているので、研究打ち合わせのための旅費も必要となる。また、国内外で開催される学会等において研究の成果を広く公表するために使用する。
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