研究課題/領域番号 |
15K08734
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
景山 誠二 鳥取大学, 医学部, 教授 (60252706)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒト免疫不全ウイルス(HIV) / HIV流行阻止・軽減 / エイズ発症予防 / HIVの増殖能 / HIV量 / 単核細胞初代培養 / 薬剤耐性ウイルス / APBEC3B |
研究実績の概要 |
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の流行阻止・軽減、エイズ発症予防のために、高いHIV量を早期に達成する因子のひとつを、ウイルス株の増殖能と考え、「HIVの増殖能の高さが、感染連鎖・早期の進行を決める」との仮説をフィリピン共和国にて検証した。一方、正常細胞に既存の抗ウイルス因子の多様性が、HIV感染者付随感染症に影響をもつ程度について、インドネシア共和国で検証した。 フィリピン共和国:株に増殖能よる増殖能の違いを実証することを目指した。その結果、150検体の血漿を得て、89検体まで血漿由来のHIV分離を終了した。HIV分離は、血漿中のHIVをビーズで濃縮し、その後4週間の単核細胞初代培養方式を採用した。その結果、4週目の培養上清中に9.0% (8/89) の事例でHIV抗原を確認できた。4株を再感染の実験系に使用したところ、株による明らかな増殖レベルの違いがみられた。今後、詳細な検討により増殖レベルの判定プロトコルを決定する。一方、81検体について血漿中のpol遺伝子配列を決定し、既存の解析終了株と共に系統樹上に展開した。同時に、治療薬剤に耐性を示すウイルスの有無・特徴を検討した。その結果、90% (73/81)の株に薬剤耐性ウイルス候補株が検出された。全て逆転写酵素阻害薬への耐性を示唆し、1例のみHIVプロテアーゼ阻害薬に耐性を示した。 インドネシア共和国:APOBEC3Bの多様性とHIV感染者に付随するB型・C型肝炎ウイルス感染頻度に関連を見出した。 このように、(1)増殖能に違いのある株を同定し、(2)抗HIV治療薬に耐性を示す多様なウイルスが観察され、(3)抗HIV治療薬に耐性をもつ場合でも増殖能が減少しないことが推測された。さらに、(4)抗ウイルス因子は個体によって違い、その影響がエイズに伴う他の感染に影響していることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)増殖能の異なるHIVを分離できた。この一連のプロトコル完成にむけて見通しが立った。 2)初年度に150検体の血漿を確保できた。次年度も同様の規模を達成できる見込みがたった。 3)81検体の遺伝子解析を終了でき、既存の解析株と合わせて、系統樹の規模を拡大できた。 4)APOBEC3Bの多様性とHIV感染者に付随するB型・C型肝炎ウイルス感染頻度の関連を一定規模の集団で評価できた。
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今後の研究の推進方策 |
1)HIV分離培養終了時に抗原陽性となった株の増殖能比較:4週目の培養上清にHIV抗原を確認した残りの4例について増殖レベルを確認する。 2)HIV分離培養終了時に抗原陰性となった株のHIV-RNAコピー数計測と増殖能比較:培養終了時に抗原陰性となった事例には、増殖能の低いHIV株の存在が予想される。HIV分離培養終了時に、HIVの増殖があり、かつ、抗原陽性レベルを下回った株のRNAコピー数を求め、増殖能の検討検体として解析に供する。 3)個体内抗ウイルス因子の多様性:より多様な人口集団で検証する。
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