研究課題/領域番号 |
15K08740
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
加茂 憲一 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (10404740)
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研究分担者 |
佐藤 健一 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (30284219)
冨田 哲治 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (60346533)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がんリスク評価 |
研究実績の概要 |
がんリスク評価のためには、がんの動向を精確に把握する必要がある。がんの時系列の挙動に影響を与える3要因は年齢・時代・生まれ年とされているが、これらの効果を分離し評価することは困難である。それは、これらの要因間に完全な線形従属な関係が存在するという識別問題が存在するからである。年齢効果と時代効果に関する解析は比較的易しいとされているが、生まれ年効果(出生コホート効果)の検出は極めて困難である。 この問題を解決するために、人口をオフセットとし、がん死亡数を被説明変数とするポアソン回帰モデルを構築した。その際の説明変数としては、年齢と時代に関する多項式およびそれらの交互作用項による基底を設けた。また、それらとは別に出生コホート効果をガウス基底により導入した。この統計モデルを用いることにより、出生コホート効果の①位置(効果の中心年)と、②期間(前後何年に効果が波及するのか)についての最適化を行った。出生コホート効果が高いとされる肝臓がん死亡に対して提案手法を適用すると、1934年生まれ世代における強い効果が検出された。この効果はリスクを増加させる方向であり、前後約4年に影響を与えていた。これらの結果は、昭和一桁生まれ世代における肝炎ウイルス高キャリア率に起因した肝がん死亡多発を指摘する疫学的知見とも一致するものであり、本提案手法が妥当であることを示唆するものである。一方で肺がんに対する解析においては、肝がんと逆にリスクを低減させる効果が、1939年生まれ世代に検出された。この結果は、戦後におけるタバコ欠乏の影響であるとする疫学的知見とも一致していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ポアソン回帰モデルを構築し、出生コホート効果の顕著な臓器(肝臓と肺)の死亡に関して、従来の疫学的知見と一致する結果(出生コホート効果に関する情報)を得た。スケジュール上も内容上も予定通りの進捗である。
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今後の研究の推進方策 |
出生コホート効果について、①中央年、②期間、の検出が可能な統計モデルを構築した。出生コホート効果については、これら以外にも、③存在性の有無、④複数存在する場合は個数、も重要な要素であることから、平成28年度以降はこれらに着手する。 実データ解析においては、出生コホート効果が顕著でないとされる臓器に関する解析を行う予定である。 現在は全国死亡データを用いた解析であるが、罹患データや地域性のあるデータへと解析対象を拡張し、それらの結果をモデルの洗練において活用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究打ち合わせ1回分を、研究班員全員が参加した国内学会期間中に完了させたため、その分の旅費が繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費に関しては、年3回の研究打ち合わせ会議を広島で開催する予定である。また、研究成果(進捗状況)を、国際学会(香港)および国内学会(日本公衆衛生学界、日本疫学会)で発表予定である。また各学会における参加費も必要である。物品に関しては、解析・学会プレゼンに用いるノートPCを購入予定である。研究において必要な事務用品も購入予定である。
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