研究課題
末期腎不全のみならず心血管病の強力な危険因子である慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)は国民保健,社会経済上の重大な負担である.背景に存在する生活習慣病は本来一次予防が可能な疾患群であるが,その成否は個人を含むさまざまなレベルの行動変容に依るところが大きい.本研究は個人の健康行動や生活習慣修正に関する行動変容ステージモデル(トランスセオレティカルモデル)に着目し,①行動変容ステージとCKD発症進展との関連,②行動変容ステージと生活習慣修正,健診受診,受療等の行動との関連,③行動変容ステージに変化をもたらすことの疾病予防における意義を、個人の経年変化の観察可能な大規模な一般住民集団,患者集団のデータセットを用いた解析により明らかにすることを意図した.特定健診を受診した一般住民集団におけるCKDや生活習慣病の発症・重症化とその上流に位置する生活習慣や行動および行動変容ステージとの要因解析が進行し,これまで「運動習慣と蛋白尿の関連に対する肥満の影響」 ,「蛋白尿新規発症と生活習慣変化の関連」「高中性脂肪血症のCKD発症の関連に与えるアルコール摂取の影響」,「アルコール摂取とCKDの関連に対する喫煙の影響」などを明らかになった.直近の検討で糖尿病の新規発症と身体活動に関する指標(運動習慣,運動量,歩行速度)との関連を検討し,多変量解析により速い歩行速度が糖尿病新規発症の独立した関連因子(発症抑制因子)となることが示され,サブグループ解析では65歳以上,男性,BMI>25の群でこの関連が観察され,速い歩行速度の群で最近の体重変動が小であることが明らかになった.一方,横断的な行動変容ステージとの身体活動の関連は明らかでなく,縦断的なステージの変化量との関連などを含む更なる検討の継続が必要と考えられた.
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Sci Rep
巻: 8 ページ: 13927
Clin Exp Nephrol
巻: 22 ページ: 1133-1142