研究実績の概要 |
1. B型肝炎(HB)ワクチンに対する初期免疫応答 HBワクチン接種後、抗原が抗原提示細胞に取り込まれ分解産物とHLAが細胞表面に提示され、CD4+T細胞が活性化される。また、抗原自体がB細胞レセプターに認識され、初期にはIgM抗体が分泌されるが、その後、活性化CD4+T細胞の補助を受けた活性化B細胞が形質細胞に分化し、IgG抗体が産生されるとされている。今回、HBワクチンに対するT細胞の初期免疫応答についてHBs抗体価獲得と関連する因子であるHLA、T細胞受容体β鎖(TCRβ)を初回HBワクチン接種者5例で検討した。同時にB細胞受容体IgG重鎖(BCR IgG H chain)についても検討を行なった。その結果、(1) 5例全例がHBs抗体を獲得したため、HLAとの明らかな関係は見いだせなかった。(2) HBs抗体価は、HBワクチン2回接種後10mIU/mL未満であったが、3回接種後10mIU/mL以上であった。(3) HBワクチン2回接種後にTCRβレパトアは上昇、BCR IgG H chainレパトアは低下していた。(4) 以上より、HBs抗体獲得者においてはHBワクチン2回接種後HBs抗体価は10mIU/mL未満ではあるが、TCRβレパトア、BCR IgG H chainレパトアに変化が起きおり、それらがHBs抗体獲得のサロゲートマーカーとなる可能性が示唆された。 2. HBワクチン接種後のB細胞の免疫記憶 HBワクチン3回接種後のHBs抗体価は、個人差があり、経時的に低下するが、HBs抗原特異的memory B細胞の機能と反応性が確認できれば、追加接種を減らすことが可能性となる。HBワクチン接種後およびHBワクチン未接種者の末梢血単核球(PBMCs)を分離後、マイクロビーズを用いて分離したB細胞に標識付CD19, CD14, CD27抗体を加え、さらにHBs抗原および標識付HBs抗体を添加した前後でFlow cytometryを用いて解析を行なった。その結果、memory B細胞は末梢血中に僅かに存在するが、HBs抗原特異的であるかの検討が必要と考えられた。
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