日本とパキスタンの妊婦を対象に、重金属曝露と歯周病の相乗効果が早産・低体重児出産に与える影響を研究室の重金属汚染調査の結果と合わせて評価した。また、妊婦の重金属曝露の汚染源についてもあわせて調査した。 重金属曝露・歯周病・出産状況の全項目調査は、日本102名とパキスタン70名の計172名を対象に実施した。低体重児出産に対する重金属/歯周病/組合せ(重金属+歯周病)のそれぞれのオッズ比を求めてリスク評価した。重金属曝露による低体重児出産のオッズ比は2.04倍(95%信頼区間0.81-5.15)、歯周病(妊娠期に歯肉からの出血有り)のオッズ比は1.59倍(95%信頼区間0.65-3.89)、組合せ(重金属+歯周病)のオッズ比は4.74倍(95%信頼区間1.54-14.54)となり、重金属曝露と歯周病の組合せにより低体重児出産のリスクが有意に増加し、負の相乗効果があることを示唆した。 妊婦の重金属(鉛とヒ素)曝露の汚染源調査では、重金属曝露評価のための生体試料として血液と爪を、その汚染源として飲料水、食品(陰膳)、調理器具、ハウスダスト、吸引性粉じん、土壌、化粧品、ガソリンおよびエンジンオイルを回収し、鉛とヒ素濃度測定と鉛同位体比分析を実施した。その結果、パキスタン妊婦の爪が化粧品により鉛汚染していることが明らかとなり、鉛は血中鉛濃度で、ヒ素は爪中ヒ素濃度で曝露を評価すべきことが分かった。また、日本の妊婦では重金属曝露しているものはいなかったが、パキスタンの妊婦は鉛とヒ素それぞれに曝露しているものが存在した。そして、パキスタンにおける鉛曝露の汚染源は、陰膳とハウスダスト、ヒ素曝露の汚染源は、飲料水に由来することが確認された。
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