研究課題/領域番号 |
15K08748
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
中島 滋 文教大学, 健康栄養学部, 教授 (90149782)
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研究分担者 |
秋吉 美穂子 文教大学, 健康栄養学部, 准教授 (20589577)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒスチジン / 抗酸化 / セレン |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒスチジンの抗酸化作用を調べることを目的とした。抗酸化機能の一つにSOD系があり、セレンを含むグルタチオンペルオキシダーゼが重要な役割を演じている。セレン不足により克山病(心筋梗塞)が発症することが知られている。グルタチオンペルオキシダーゼは、活性部位にセレン(セレノシステイン)とヒスチジンを有している。したがって、ヒスチジンとセレンには相互作用があり、ヒスチジンを多く摂取するとセレン摂取量も多くなり、SOD系の働きを高めて、抗酸化作用が強まることが期待される。本研究では、ヒトを対象とした食事と基礎代謝量調査およびラットを用いた動物実験を行い、SOD系の酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼの補欠分子族であるセレン(セレノシステイン)の利用に起因するヒスチジンの抗酸化作用を調べる。 今までにヒトを対象とした食事調査を行い、ヒスチジン摂取量とセレン摂取量との間に有意な正の相関関係があることが明らかになった。そこで昨年度は食品成分表を用いて、ヒスチジンと無機質を含む食品(121食品)に着目し、食品中のヒスチジン量もしくは食品タンパク質中のヒスチジン量と無機質量との関係を検討した。 その結果、食品中のヒスチジン量(mg/100g)とセレン量(μg/100g)との間には、他の無機質よりも高い、有意な正の相関関係が認められた。また、食品におけるタンパク質中のヒスチジン量(mg/g)と総無機質中のセレン量(μg/mg)との間にも、他の無機質よりも高い、有意な正の相関関係が認められた。本研究の結果より、ヒスチジンは食品中においてセレンと結合して存在していることが示唆された。また、飼料組成(ヒスチジン濃度およびセレン濃度)を検討して雄ラットを用いた動物実験を行い、ヒスチジン摂取により、セレンの吸収率と体内保留率が高くなる傾向を再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の学務と学会活動が予定より多忙となり、研究期間を1年間延長させていただきました。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は次の研究を行う予定である。 1、海外における栄養調査を研究分担者のエフォートを高くして行い、ヒスチジン摂取量とセレン摂取量の関係とその地域特性を明らかにする。 2、ヒトを対象とした栄養調査と基礎代謝量測定を行い、ヒスチジン摂取量とセレン摂取量および基礎代謝量との関係を調べる。基礎代謝量は老化に伴い減少することが知られているので、ヒスチジンおよびセレンに抗酸化作用があり、老化防止の役割を演じているならば、ヒスチジンおよびセレン摂取量が多くなると基礎代謝量が年齢の割に高くなると考えられる。 3、雌雄ラットを用いた動物実験を行い、ヒスチジンによるセレンの吸収および体内保有率への影響を明らかにする。また、ヒスチジン摂取による血漿中セレン量と血漿のグルタチオンペルオキシダーゼ活性への影響についても検討する。ヒスチジンがグルタチオンペルオキシダーゼへのセレン供給に寄与する抗酸化作用を有するのであれば、ヒスチジン食群の血清グルタチオンペルオキシダーゼ活性と血清セレン濃度は標準食群より高くなると考えられる。 これらの結果から、SOD系の酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼの補欠分子族であるセレン(セレノシステイン)の利用に起因するヒスチジンの抗酸化作用について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究代表者の学務と学会活動が予定より増えたため、予定していた海外調査や動物実験等を実施できなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。 (使用計画) 今年度は、今後の研究の推進方策に記載したように、「ヒトを対象とした海外での食事調査」、「ヒスチジンおよびセレン摂取量と基礎代謝量の測定」、「雌雌ラットを用いた動物実験」を行い、残額の経費を使用する予定である。
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