本研究は、ヒスチジンの抗酸化作用を調べることを目的とした。抗酸化機能の一つにSOD系があり、セレンを含むグルタチオンペルオキシダーゼが重要な役割を演じている。グルタチオンペルオキシダーゼは、活性部位にセレンとヒスチジンを有している。したがって、ヒスチジンとセレンには相互作用があり、ヒスチジンを多く摂取するとセレン摂取量も多くなり、SOD系の働きを高めて、抗酸化作用が強まることが期待された。本研究では、ヒトを対象とした食事と基礎代謝量調査およびラットを用いた動物実験を行い、セレンの利用に起因するヒスチジンの抗酸化作用を調べた。今年度は、ヒスチジンの基礎代謝への影響と雌ラットを用いた動物実験を行った。 ヒトを対象とした食事調査では、ヒスチジン摂取量とセレン摂取量との間に有意な正の相関関係が認められた。また、食品中のヒスチジン量(mg/100g)とセレン量(μg/100g)との間には、他の無機質よりも高い、有意な正の相関関係が認められた。さらに、食品におけるタンパク質中のヒスチジン量(mg/g)と総無機質中のセレン量(μg/mg)との間にも、有意な正の相関関係が認められた。これらの結果より、ヒスチジンとセレンとの間には高い親和性があることが示唆された。一方、基礎代謝量とヒスチジンを多く含む赤身魚の嗜好性との間には相関関係は認められなかったが、女性対象者において、基礎代謝量とマグロの嗜好性との間に有意ではないものの正の相関が観察された。 動物実験では、飼料組成(ヒスチジン濃度およびセレン濃度)を検討した飼料を用いて雌雄ラットを飼育し、セレンの吸収率および体内保有率を測定した。その結果、雌雄ラットにおいて、ヒスチジン摂取によりセレンの吸収率と体内保留率が高くなる傾向が観察された。 以上の結果から、ヒスチジンはセレン利用を促進することにより、抗酸化作用を有すると考えられた。
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