研究実績の概要 |
白内障、緑内障および強度近視(強度近視に伴う網脈絡膜変性)は、中高齢者における視力低下・失明の重要な原因であり、中高年者のQOLの低下に大きく関わっている疾患である。しかし少なくとも本邦ではまだ、大規模かつ妥当性の高い疫学研究に基づく一次予防方法に関するエビデンスは未確立である。平成28年度は白内障発症および眼圧上昇のリスクに関連する因子を明らかにすることができたので、平成29年度は強度近視研究を中心にデータの収集と解析を進めた。なお、白内障および緑内障研究についてもデータの収集は並行して進めた。 4歳から96歳の日本人332,469眼を対象に屈折異常の分布を性・屈折度数階級別に分析した。その結果、男女ともに-2.75D ~-4.5Dの中等度近視眼が最も多く、全体の約40%を占めていた。また、+0.75D以上の遠視眼は女性に多いものの、全体に占める割合は男女ともに1%未満であったのに対し、-6.75D以上の強度近視眼は男性に多く、男女ともに全体の約10%を占めていることが明らかになったので、これらの結果を学会にて発表した。 さらに、乱視を有する216,971眼を対象に乱視軸の分布を分析した結果、180°が最も多く(44.4%)、次いで90°(14.1%)、170°(7.3%)となっていた。また、乱視度数別に解析した結果、180°は全ての乱視度数群において最も多かったが、乱視の度数が強くなるに従って、90°の割合が有意に低くなる傾向を認めたので、これらの結果を国際学会(ARVO2017)にて発表した。一方、屈折度数の進行について年齢階級別に解析した結果、男女ともに20歳未満の若年齢層では近視方向に進行する変動量が大きく、50歳以上の中高年齢層では遠視方向に進行する変動量が大きい可能性が示唆されたので、これらの結果を国際学会(IEA2017)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)白内障研究 1990(平成2)年にスタートした多目的コホート研究(JPHC Study)のコホート対象地域住民76,190 人(男性35,365 人、女性40,825 人)を対象に白内障罹患に関する5 年間の追跡調査を行った結果、男性1,004 人(2.84%)、女性1,807 人(4.43%)が新たに白内障に罹患していた。この結果を基に、白内障罹患リスクに関連する因子を明らかにするための解析を進めている。 2)緑内障研究 茨城県水戸地域に居住する住民1,113 人を対象に、緑内障の最も重要な危険因子の1つである眼圧に関連する因子を解明するための断面研究および追跡研究を実施している。これらのデータを基に、眼圧値の上昇または下降に関連する生活習慣関連因子を明らかにするための解析を進めている。 3)強度近視研究 平成29年度は強度近視研究のデータ収集と解析が計画通り大きく進捗した。4歳から96歳の日本人332,469眼を対象に屈折異常の分布を性・屈折度数階級別に分析した。その結果、男女ともに中等度近視眼が最も多く全体の約40%を占めること、遠視眼は女性に多く、強度近視眼は男性に多いことが明らかになったので、これらの結果を第82回日本健康学会in沖縄にて発表した。本演題は、第82回日本健康学会優秀演題賞を受賞した。さらに、乱視軸の分布を分析した結果、180°は全ての乱視度数群において最も多いこと、乱視の度数が強くなるに従って90°の割合が有意に低くなる傾向があることが明らかになったので、これらの結果を国際学会(ARVO2017)にて発表した。一方、屈折度数の進行については、男女ともに20歳未満の若年齢層では近視方向に進行する変動量が大きいこと、50歳以上の中高年齢層では遠視方向に進行する変動量が大きいことが明らかになったので、これらの結果を国際学会(IEA2017)にて発表した。
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