研究実績の概要 |
白内障、緑内障および強度近視(強度近視に伴う網脈絡膜変性)は、中高齢者における視力低下・失明の重要な原因であり、中高年者のQOLの低下に大きく関わっている疾患である。しかし少なくとも本邦ではまだ、大規模かつ妥当性の高い疫学研究に基づく一次予防方法に関するエビデンスは未確立である。令和元年度は強度近視研究を中心にデータの収集と解析を進めた。なお、白内障と緑内障研究についてもデータの解析は並行して進めている。 10歳から29歳の日本人290,775眼を対象に5年間における屈折度数の変化を性・年齢・屈折度数階級別に分析した結果、15歳未満では男性よりも女性の方が屈折度数の変動量が大きくなるのに対し、15歳以降では女性よりも男性の方が屈折度数の変動量が大きくなること、加齢とともに屈折度数の変動量が小さくなること、近視の進行は男性では8歳、女性では7歳からの5年間が最大であること、学齢期においては追跡開始時の近視度数が小さいほどその後の屈折度数の変動量が大きくなることが明らかになったので、これらの結果を学会にて発表した(第78回日本公衆衛生学会総会優秀ポスター賞受賞)。 さらに、紫外線暴露による近視の進行への影響を明らかにすることを目的に、12歳から15歳の日本人を対象に、紫外線カット付きソフトコンタクトレンズ使用群(UV+SCL)35,734眼、紫外線カットなしソフトコンタクトレンズ使用群(UV-SCL)21,401眼の計57,135眼を5年間追跡した。5年間における屈折度数の変化を性・屈折度数階級別に分析した結果、男女ともに、またいずれの近視度数においてもUV-SCL群はUV+SCL群に比較して近視の進行が有意に大きかった。本研究の結果から、紫外線暴露は近視を進行させるリスク要因である可能性が示唆されたため、この結果を国際学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)白内障研究 コホート対象地域住民76,190 人(男性35,365 人、女性40,825 人)を対象に白内障の罹患および手術に関連する因子を解明するための追跡研究を実施している。これらのデータを基に、白内障罹患リスクに関連する因子を明らかにするための解析を進めている。 2)緑内障研究 茨城県水戸地域に居住する住民1,113 人を対象に、緑内障の最も重要な危険因子の1つである眼圧に関連する因子を解明するための断面研究および追跡研究を実施している。これらのデータを基に、眼圧値の上昇または下降に関連する生活習慣関連因子を明らかにするための解析を進めている。 3)強度近視研究 令和元年度は強度近視研究のデータ収集と解析が計画通り大きく進捗し、新たに約7万眼のデータを収集することができた。10歳から29歳の日本人290,775眼を対象に5年間における屈折度数の変化を性・年齢・屈折度数階級別に分析した。その結果、屈折度数の変動量の大きさは男女で年齢による違いがみられること、加齢とともに屈折度数の変動量が小さくなること、近視の進行は男性では8歳、女性では7歳からの5年間が最大であること、学齢期においては追跡開始時の近視度数が小さいほどその後の屈折度数の変動量が大きくなることが明らかになったので、この結果を学会(第78回日本公衆衛生学会総会)にて発表した。さらにこの結果を基に、屈折度数の変動量が特に大きい12歳から15歳を対象に、紫外線暴露による近視の進行への影響を明らかにすることを目的に、紫外線カット付きソフトコンタクトレンズ使用群35,734眼、紫外線カットなしソフトコンタクトレンズ使用群21,401眼の計57,135眼を5年間追跡した結果、男女ともに、紫外線暴露は近視を進行させるリスク要因である可能性が示唆されたため、この結果を、国際学会(ARVO2019)にて発表した。
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