本研究では、以下の3つの研究を実施した。研究Ⅰは、認知症予防推進事業に参加している地域在住高齢者を対象に、自宅生活を継続させている高齢者の心身機能を長期に追跡調査し、その特徴を明らかにすることを目的とした。事業参加1年目と5年目の各測定値を比較した結果、普通歩行の時間、歩数、二重課題(以下、DT)歩行の時間、歩数、動物呼称数、Mini-Mental State Examination (以下、MMSE)の総得点、MMSE下位項目の日時、遅延再生、3段階命令に有意な低下が認められた。また、5年間(1、3、5年目)の歩行パターンと認知機能の推移について検討した結果、DT歩行(時間と歩数)、MMSEに有意な低下が認められた。 研究Ⅱは、もの忘れ外来を受診者とその家族を対象に、もの忘れ外来利用の実態調査および認知症の重症度別の特徴を明らかにすることを目的とした。もの忘れ外来を受診したきっかけで多かったものは、認知症の行動・心理症状(以下、BPSD)の悪化、もの忘れの悪化等であり、家族の希望で多かったものは、診断の確定、症状への対応・アドバイスであった。次に、認知症の重症度尺度(以下、CDR)は、認知機能、BPSD(以下、DBD13)、日常生活動作尺度と有意な相関関係にあり、状態像の把握を容易にするスクリーニング検査であることが示された。 研究Ⅲとして、MCIおよび軽度認知症者を対象にした在宅生活支援プログラムを開発し、ランダム化比較試験を用いた介入研究によりその効果を検討するものである。在宅生活支援プログラムは、学生主体型の認知症予防事業の中で、対象者の運動習慣を6ヶ月管理するものである。結果、介入群は対照群に比して、認知機能、手段的日常生活動作(以下、IADL)の有意な改善が認められた。また、介入群においては、認知機能、IADL、運動時間に有意な改善が認められた。
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