研究課題/領域番号 |
15K08761
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
西 信雄 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国際産学連携センター, センター長 (80243228)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 健康の社会的決定要因 / 非感染性疾患 / シミュレーションモデル / システム・ダイナミックス |
研究実績の概要 |
超高齢社会にある日本において、がん、循環器疾患、糖尿病等の非感染性疾患の予防はますます重要となっている。非感染性疾患の原因については、生活習慣等の危険要因のみならず、「健康の社会的決定要因」が注目されている。平成27年度は、文献データベース(医中誌、PubMed)に収載された論文をもとに、日本における健康の社会的決定要因に関する研究の動向を明らかにすることを試みた。PubMedにおいては、社会的決定要因(social determinants of health)、学歴(education)、収入(income)、ソーシャルキャピタル(social capital)、社会環境(social environment)をキーワードとして組み合わせ、日本(Japan)に関する論文を検索し、延べ62件の該当論文を得た。その中から重複する論文を除外し、原著に相当する研究論文21件について、研究デザイン等を検討した。その結果、日本において健康の社会的決定要因に関する研究論文は、まず2005年前後から断面調査に基づく成果が発表され、次いで2010年以降にコホート研究に基づく成果も発表されるようになっていた。健康の社会的決定要因については、ソーシャルキャピタルを中心に、キーワードとして用いた学歴、収入の他に貧困指数を用いた研究もみられた。健康面のアウトカムの指標としては、主観的健康感や全死因の死亡率等、全般的な健康状態の他に、機能低下や精神的健康、収縮期血圧、生活習慣(食習慣、喫煙、飲酒)、健診受診等があり、口腔状態や入れ歯・ブリッジの使用、歯の喪失等歯科領域の研究も精力的に行われていることが明らかとなった。以上より、日本においても健康の社会的決定要因についてコホート研究も含めてエビデンスが蓄積されており、健康の社会的決定要因に着目した非感染性疾患の予防シナリオを、シミュレーションモデルをもとに検討する環境が整いつつあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は医中誌、PubMedといった文献検索システムを用いて、健康の社会的決定要因に関する日本の論文を幅広く収集した。シミュレーションモデルの作成を念頭に、収集した論文をもとに、日本における健康の社会的決定要因に関する研究の動向を明らかにした。平成28年度においては、これらの結果をもとに本格的にシミュレーションモデルの作成に着手する。総合的にみて、達成度としては順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては、これらの結果をもとに本格的にシミュレーションモデルの作成に着手する。そのため、平成27年度に「保健統計については厚生労働統計を中心として、国民生活基礎調査や国民健康・栄養調査の統計値を参照し、必要に応じて調査票情報の二次利用申請も行う。」としていた点については、本格的なシミュレーションモデルの作成に合わせて平成28年度に実施する。 システム・ダイナミックスを用いた予防医学分野の研究は米国を中心に海外では進んでいるが、日本ではまだ低調である。特に、健康の社会的決定要因に着目してシミュレーションモデルをもとに国レベルの介入策を検討する研究では立ち後れており、本研究の意義は大きい。必要に応じて、米国等の研究者との国際共同研究も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、健康の社会的決定要因に関する資料の収集のため、文献検索システムの医中誌Webの年間利用契約を行い数点の資料を購入する等、概ね順調に研究を実施したが、特に学会発表等は行わなかったため、旅費を中心に次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度においては、国民健康・栄養調査等の調査票情報の二次利用申請も行い、本格的に健康の社会的決定要因に関するシミュレーションモデルの作成を実施する。旅費をもとに、海外も含めたシステム・ダイナミックス分野の学会で研究成果の発表を行うとともに、必要に応じて国際共同研究を実施する。また、研究補助員も必要となるため、人件費を充当して雇用する。
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