研究実績の概要 |
本研究では地域在住中高年の長期縦断疫学調査の15年の経時データを用いて、アミノ酸摂取が内分泌環境や遺伝素因による骨格筋量減少に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 1.研究成果の具体的内容 平成27~29年度には「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」のデータを用いて、中高年者の血漿アミノ酸量が多いほど、また血中テストステロン量に関わらず分岐鎖アミノ酸(BCAA)摂取量が多いほど横断的、縦断的に骨格筋量が多いことを明らかにした。 平成30年度は、同NILS-LSAのデータにて、男性996名(40~79歳)を対象とし、アンドロゲン受容体(AR)遺伝子多型の違いによる骨格筋量減少のリスクに18種のアミノ酸摂取がどのような影響を及ぼすか年齢群別に検討した。骨格筋指数(SMI, 四肢筋量kg÷身長㎡)の経時データを従属変数とし、第1次調査時の総エネルギー調整アミノ酸摂取量(18種)、AR遺伝子多型、第1次調査からの経過年数の主効果、および交互作用の影響について混合効果モデルを用いて年齢群別(中年群、高齢群)に検討した。AR遺伝子多型の短群率は、中年群59.0%、高齢群55.6%であった。中年群ではグルタミン酸、プロリンの主効果が有意であり、摂取量が多いほど骨格筋指数が高かった。高齢群ではアラニン、アルギニン、アスパラギン酸摂取量とAR遺伝子、経過年数との交互作用が有意で、AR遺伝子によってアミノ酸摂取量の骨格筋指数への影響が異なることが明らかになった。 2.研究成果の意義と重要性 摂取するアミノ酸によってはAR遺伝子による骨格筋減少のリスク軽減の可能性が示唆された。これまでの血漿アミノ酸量およびBCAA摂取量が骨格筋量に及ぼす影響を含め、さらなる詳細な解析が必要ではあるが、これはサルコペニア予防の知見として重要であり、意義があると考えられる。
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