研究課題/領域番号 |
15K08764
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研究機関 | 公益財団法人大阪府保健医療財団大阪がん循環器病予防センター(予防推進部・循環器病 |
研究代表者 |
山本 兼右 公益財団法人大阪府保健医療財団大阪がん循環器病予防センター(予防推進部・循環器病, その他部局等, 技師 (40745486)
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研究分担者 |
木山 昌彦 公益財団法人大阪府保健医療財団大阪がん循環器病予防センター(予防推進部・循環器病, その他部局等, その他 (10450925)
藤原 尚子 千里金蘭大学, 看護学部, 准教授 (90469544)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胃がん検診 / 被ばく線量 / 実効線量 / 入射表面線量 / 面積線量 / 集団検診 / X線TV透視撮影装置 / 被ばく防護 |
研究実績の概要 |
実効線量の測定、算出するには時間を要するため、受診者の検査の実効線量をリアルタイムに表示させることができない。本研究は、胃がんX線検診において受診者の1検査の実効線量を検査終了時に瞬時に表示させるための実効線量表示システムを構築することである。瞬時に実効線量を表示する方法として、DAPと実効線量の回帰式を求め、DAPから回帰式を使って実効線量を算出しパソコン液晶画面に表示する方法を行う。DAPと実効線量の回帰式は、3施設の胃がん検診受診者の合計499名を用い、PCXMC dose calculation ver2.0.1.3 (STUK-Radiation and Nuclear Safety, Helsinki, Finland)で実効線量 (mSv) を算出する。基礎実験として、胃ファントムを用いてRadocal線量計とNDD法による線量測定をおこない、DIAMENTORのDAPとの整合性を確認した。3施設のDAPと実効線量の結果を以下に示す。DAP (cGycm2) の中央値は1353.98cGycm2,最小値は246.24cGycm2,最大値は9940.4cGycm2であった.実効線量(mSv)の中央値は5.86mSv,最小値は1.18mSv,最大値は38.38mSvであった.DAP と実効線量の回帰式を以下に示す.Y=0.737+0.0003676X Y:実効線量(mSv) X:DAP(mGycm2) DAPから実効線量を表示するプログラムを作製した。結論はX線TV透視撮影装置において胃X線検査の実効線量を検査終了時に瞬時にパソコン画面に表示することが可能となった.胃がん検査終了時に実効線量を瞬時に表示させる試みは世界的にも行われておらず独創的な研究であり、受診者にとって被ばくの不安に対する解消となる意義ある研究であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度において基礎実験である胃X線TV透視撮影装置で胃ファントムを用いて、Radcal線量計Accu-Goldの半導体マルチセンサーとイオンチェンバーで入射表面線量Entrance Surface Dose(ESD)(mGy)をそれぞれ20回計測、その時の面積線量計DIAMENTOR M4-KDKでDose Area Product (DAP)(cGycm2)とESD(mGy)をそれぞれ20回計測した。NDD法で入射表面線量ESD(mGy)を算出した。結果は半導体マルチセンサー入射表面線量ESDの平均0.18mGy、イオンチェンバーESDの平均は0.23mGy、面積線量ESDの平均0.18mGy、DAPの平均49.8mGycm2であった。NDD法の入射表面線量ESDは0.2mGyであった。面積線量計のDAPとESDの精度を確認した。DAPと実効線量の回帰式を算出するための、DAPの線量データが当センター含め3施設から499名分のデータがスムーズに収集できた。1検査の曝射数は、当センター基準撮影法Ⅰ120名は10.08曝射、基準撮影法Ⅱ120名は17.98曝射、A施設70名は27曝射、B施設189名は24曝射であった。DAPの平均8488.72mGycm2、実効線量の平均3.69mSvであった(r=0.99、P<0.05)。有意に強い相関関係を認めた。DAPから回帰式を使って実効線量をPC画面に瞬時に表示するシステムのプログラムを作製することも速やかに行うことができた。回帰式の定数と係数を簡単に変更できるようにパソコン画面に修整画面を表示するようにプログラムを構築した。本研究は計画以上に進展している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として、①現在回帰式構築のための受診者データを3施設から499名を収集したが、精度をさらに高くするため受診者データを増やすことが重要であると考える。②東芝メデイカル社のX線TV透視撮影装置で実効線量表示システムを構築したが、今後、国内X線TV透視撮影装置を製造販売している他2社である島津製作所と日立製作所の装置もこのシステムを納入するため開発し運用したいと考えている。③最終的には、胃がん検診を行っている国内全X線TV透視撮影装置にこの実効線量表示システムを標準装備できるようにしてシステムの運用を確立したい。④実効線量は、パソコンのHDDのデータベースに保存蓄積される。全国の胃がんX線検診のX線TV透視撮影装置のデータを収集しDRLsの策定と被ばく線量の分析に活かしたいと考える。⑤胃がん検診の対策型検診、任意型検診、精密検査の臨床における被ばく線量の分析を行う。⑥X線TV透視撮影装置はFPD方式とI.I.DR方式があり、それぞれの基準撮影法別に被ばく線量のデータをもとに分析することが重要であると考えている。以上が今後の推進方策であり研究の方向性である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の使用状況については、粛々と予定通り進んでいる。研究分担者の研究費につきまして、実験も統計処理も順調に進んでいる状況のため、打ち合わせや会議費が当初予定より少なく、書籍購入費も抑えているため、研究出費も抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、本研究内容をEMBEC2017国際学会(フインランド)で発表し 広く世界に周知したいと考えており、旅費や宿泊代費用が、国内で開催される学会の出席より費用がかかること、論文の登録費と論文の別刷り印刷費などに使用する。国際内外学会の旅費及び論文発表経費に掛かる費用を計上する。
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