研究課題/領域番号 |
15K08766
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
細田 正洋 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (30457832)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 桜島 / ラドン / 気象観測 / 水分含量 / 連続測定 / 火山性地震 / 肺がん |
研究実績の概要 |
大気汚染物質が肺がんのリスク要因の一つである事は多くの研究からも明らかであるが、火山活動との因果関係には不明な点が多い。国内では鹿児島県垂水市の肺がんによる死亡率が同県の他市町村と比べて優位に高いことが報告され、その要因として桜島の火山活動に由来する可能性が指摘されている。桜島の火山活動は近年特に活発になってきており、肺がん誘発物質の一つであるラドン(放射性の希ガス)が多く放出されている可能性がある。本研究では、降灰量が最も多い垂水市内において連続的な定点観測を実施することで火山活動と地表面から放出するラドンの量との関連性について解析する。 鹿児島県垂水市内に土地所有者の許可を得て百葉箱を設置し、気温、気圧、相対湿度、降雨量、風向、風速の気象データの取得を行っている。さらに本年度からは、地表面からのラドンの放出量に影響すると報告されている、土中の水分含量を地表面から10 cm、20 cm、30 ㎝、40 cm、60 cm及び100 cmの位置で連続測定を開始した。地表面から60 cm程度までは降雨に依存して土中の水分含量は顕著に変化した。さらに、地表面から10 cm、40 cm及び100 cmに温度センサを設置し連続測定を開始した。地表面から40 cm及び100 cmの土中温度は気温の変化には大きく依存しなかったが、地表面から10 cmの温度は気温に依存して変化した。 2016年4月27日から7月2日にかけて火山性地震が続き、ラドンの放出量の上昇が認められたものの、同時に降雨も認められ、この結果は降雨による影響の可能性が考えられた。しかし、2016年8月25日から9月6日にかけて発生した火山性地震の際には、降雨は認められないもののラドンの放出量の上昇が認められた。火山性地震との関連性について引き続き検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地表面から放出するラドンのデータは順調に取得できている。さらに、気温、気圧、相対湿度、降雨量、風向、風速の気象データも順調に取得できており、本年度からは土中の水分含量を地表面から10 cm、20 cm、30 ㎝、40 cm、60 cm及び100 cmの位置で連続測定を開始し、順調に取得することができている。さらに、地表面から10 cm、40 cm及び100 cmにおける土中温度の連続測定も開始した。 降雨量と土中の水分含量との関連性、大気中と土中の温度との関連性についてもデータが積み上げられてきている。 今後は、地表面から放出されるラドンと土中環境に関するデータとの関連性について検討し、必要な補正を行うための追加実験等を実施する必要があるものの、ある特定の期間においては火山活動との関連性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、各種パラメータの連続測定を行い、それらの変動要因の解析を続けるとともに、降雨にともなう土中の水分含量の変動とそれに起因して起こる地表面からのラドンの放出量の変化に関して別途実験系を考え、データ解析に組み込む必要がある。 その上で、火山活動とラドンの放出、さらにはラドンの吸入による肺がんのリスクとの関連性について検討を進めて行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は継続的なデータ取得のために研究代表者及び連携研究者の旅費が主たる支出であるが、一部は別予算を用いたため、当該年度の予定額よりも支出が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は引き続きデータを取得するとともに、降雨に対するラドンの放出量の増加を補正するための実験を実施するための旅費として使用する予定である。また、最終年度であるため調査結果の整理と打ち合わせのための旅費として使用する予定である。
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