研究課題/領域番号 |
15K08775
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
久保 正幸 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60420519)
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研究分担者 |
荻野 景規 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70204104)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 予防医学 / 生活習慣病 / 酸化ストレス / 非アルコール性脂肪性肝炎 / アルギナーゼI / アルギニン |
研究実績の概要 |
肥満、高血糖、脂質異常などの生活習慣病やそれに起因する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH; non-alcoholic steatohepatitis)の病態には酸化ストレスが関与している。本研究では、高脂肪食誘発性のNASHを伴った生活習慣病モデルマウスを用いて、アルギナーゼIを含めた酸化ストレスの観点から生活習慣病やNASHの発症や病態を解明すると共に予防法を開発することを目的とする。 平成27年度は、生活習慣病発症前の初期肥満におけるアルギナーゼIの動態を検証した。4週齢雄C57BL/6マウスに高脂肪食または通常食を摂餌させた。8週間後に、肝臓、脂肪組織、大動脈、筋肉でのアルギナーゼIのmRNA発現量(qPCR)、肝臓と血漿中のアルギナーゼIのタンパク質量(Western blot)、血漿でのアルギニン生物学的利用能(HPLC法)やNO2-濃度(オゾン化学発光法)を解析した。高脂肪食接餌マウスの体重は有意に増加していたが、高血糖や脂肪肝の症状を呈していない初期肥満状態であった。通常食接餌マウスと比較して、高脂肪食接餌マウスの脂肪組織、大動脈、筋肉でのアルギナーゼIのmRNA発現量に有意な違いは認められなかった。一方で、高脂肪食接餌マウスの肝臓ではアルギナーゼIのmRNAおよびタンパク質の発現が有意に上昇していた。血漿においてもアルギナーゼIの上昇傾向があり、アルギニン生物学的利用能とNO2-濃度は共に有意に減少していた。以上の結果から、初期肥満状態において、肝臓でのアルギナーゼIの上昇と全身でのアルギニン代謝の変化が示された。アルギナーゼIやアルギニン代謝物が生活習慣病の発症前の早期バイオマーカーとなることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生活習慣病発症前の初期肥満状態での解析がおおむね終了した。学内の動物実験施設の改修工事長期化に伴い、生活習慣病やNASHの病態解析のための長期飼育(高脂肪食摂餌)の開始が予定より遅れる事態が生じたが、平成28年度5月には長期飼育終了とその後の解析開始が可能となり、研究計画への影響は最小限にとどまる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、既に長期飼育(高脂肪食摂餌)中のマウスを用いて、生活習慣病やNASHの病態発症後の解析を進めていく。また、肝臓でのアルギナーゼIの発現制御について、マウスを用いたin vivoでの検討に加え、細胞を用いたin vitroでの検討も行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内の動物実験施設の改修工事長期化に伴い、生活習慣病やNASHの病態解析のための長期飼育(高脂肪食摂餌)の開始が予定より遅れる事態が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の推進方策に従って、生活習慣病やNASHの病態を発症したマウスの解析や細胞を用いたin vitro実験に必要となる物品費として使用する。
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