研究実績の概要 |
平成30年度は:① 間接的影響評価を実施するための個人曝露推定モデルの作成、②衛星データ等の疫学研究への利用に関する検討を行った。①の個人曝露モデル作成では、大阪府・兵庫県・岡山県・広島県のNO2とPM2.5のモデル作成が成功し、成果の一部は国際誌へ論文として投稿を行い掲載された。また同研究は、第30回国際環境疫学会年次総会(オタワ)で発表を行った。加えて、②の衛星データの疫学研究への利用検討としてし、衛星データから推定した地表大気汚染濃度を用いることにより、①で作成した個人曝露濃度推定モデルの予測精度が向上するかについて検討を行った。結果は日本のように交通情報や大気汚染測定局が充実した地域ではモデル推定精度の著しい向上は観察されなかったが、同研究は国際環境疫学会アジア支部総会(台北)で発表を行い、大気汚染測定局が不足するアジア地域において、個人曝露予測モデル構築における衛星データの利用について研究者と議論を行った。 研究期間全体を通して、黄砂が私たちの健康へ影響を及ぼすだけでなく、交通を起因とする地表大気汚染による影響をさらに増加させることを示した。また、これらの影響は、個人が持つ属性(年齢・性別・疾病の既往歴)によって異なることを明らかにした。加えて、健康影響評価対象地域を今後拡大し、黄砂・大気汚染測定局が整備されていない地域への応用を行うべく、衛星データ等を用いた大気汚染モデルについて検討を行った。 これら期間全体を通して得た結果の一部は総括として、学会発表以外に「2017年 大気汚染にかかる政策者会議」(2017, シドニー) および、世界保機機関西太平洋事務局が主催する「大気汚染に関する協議会」 (2017年, マニラ)でも発表を行い、政策提言者への成果の共有を行った。また本研究で得られた知見を基に、さらに多地域へ展開すべく次期科研費研究へ引き継ぎ実施予定である。
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