研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本人の前立腺がん発生に関わる分子栄養学的な特性を明らかにし、個人の生活習慣・体質に応じた前立腺がん予防法を樹立することである。これまでの動物実験による報告によれば、高熱調理によって形成されたヘテロサイクリックアミンが複数の部位(前立腺、乳腺、肺等)に腫瘍を発生させることがわかっている。また、ヘテロサイクリックアミンがDNAに結合することも明らかとなっており、ヒトにおいてもDNA付加体が前立腺がんを含むヒト組織の様々な部位から検出されている。血液と詳細な食事摂取・ライフスタイルに関するデータセットをそろえた前立腺がん1,200症例、健常対照者1,350例を対象として、H29年度は、食物摂取頻度調査の結果からヘテロサイクリックアミン摂取量を計算し、1. ヘテロサイクリックアミン摂取量と前立腺がん罹患との関連性 2.ヘテロサイクリックアミン代謝に関連する遺伝子多型と前立腺がん罹患との関連性について検討を行った。具体的な結果は以下のとおりである。1. 共変量調整後も,用量依存性にヘテロサイクリックアミン摂取量と症例群との間に有意な関連性を認めた (OR, 1.90; 95%CI, 1.40-2.59; P for trend, < 0.001)。2. 遺伝子多型と前立腺がん罹患との関連性については、N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)遅延型 (OR, 1.65; 95% CI, 1.04-2.61)、シトクロームP450(CYP)1A1 GA+GG型 (OR, 1.27; 95% CI, 1.02-1.59) 、CYP1A2 型 CA+AA (OR, 1.43; 95% CI, 1.03-2.00)について、有意な罹患リスクの上昇を認めた。 本研究は、日本人の前立腺がん罹患とヘテロサイクリックアミン摂取量との関連性についての初めての研究である。日本人集団の特性に合わせた食物摂取頻度調査票を用いることによってヘテロサイクリックアミン摂取量を推定した結果,用量依存性に前立腺がん罹患と有意な関連を認めた(Environ Health Prev Med 2017: 22, 72.)
|