研究課題/領域番号 |
15K08782
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
福島 哲仁 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90208942)
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研究分担者 |
熊谷 智広 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (20528111)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 癌 / パラコート / メチルニコチンアミド / 活性酸素 / 癌治療 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病患者に癌の既往が少ないことが知られている。我々の研究結果から、ナイアシンの体内代謝産物である 1-methylnicotinamide (MNA)が脳内ミトコンドリアの complex I でラジカルを産生し、パーキンソン病の発症に関与していることが示唆され、同様の現象が全身に起こり、活性酸素に弱いがん細胞が増殖を抑制されているのではないかという仮説にたどり着いた。平成27年度は、まず癌細胞と正常細胞との活性酸素感受性の差から仮説の裏付けを行い、さらにパラコートによる癌治療の可能性を探った。 マウスヘパトーマ細胞のセルライン、およびマウス正常肝細胞を用い、パラコートが細胞に及ぼす影響について比較した。細胞を5% CO2 インキュベーターで適宜増殖させた後、プレートの各 well に200μl の培養液にて4,000個(2.0×10,000 cell/ml x 0.2)の細胞を播種し、培養した。培養を始めて2日後に、各グループ12 well ずつ、パラコートの最終濃度が0μM(control)、1μM、 5μM、10μM、50μMになるようパラコートを添加した。パラコート添加後、1日目、2日目、4日目に細胞生存率を測定した。データは、SPSS17.0 J for windows で解析し、Dunnett t test を用いて群間比較を行った。有意水準を1%未満とした。 ヘパトーマ細胞は、5μM以上の濃度群で、どの日目でもコントロールと比較して細胞数が有意に減少したが、正常肝細胞では、1日目と2日目では10μM以上で、4日目では5μM 以上の濃度群でコントロールと比較して細胞数が有意に減少した。1-5μMの間に、ヘパトーマ細胞が死に、正常細胞が生き残る最も治療効果の高い濃度が存在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度においては、当初パラコートを用いたモデルにより、癌細胞と正常細胞との活性酸素感受性の差を測り、実験条件等の検討後、MNAを用いた本実験を実施し、in vitro にて仮説の検証を試みる予定であったが、パラコートの実験により、1-5μMの間に、ヘパトーマ細胞が死に、正常細胞が生き残る最も治療効果の高い濃度が存在することが明らかとなり、パラコートによるがん治療の可能性を追求する実験を延長して検討することにした。 平成27年度中に、パラコート濃度1-5μMの間で、ヘパトーマ細胞が死に、正常細胞が生き残る最も治療効果の高い濃度決定のための詳細実験を開始しており、この結果を踏まえて in vivo 実験に進む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
パラコートの実験により、1-5μMの間に、ヘパトーマ細胞が死に、正常細胞が生き残る最も治療効果の高い濃度が存在することが明らかとなったため、パラコートによるがん治療の可能性を追求する実験を延長して実施している。つまり、最も治療効果のあるパラコートの濃度を決定する詳細実験をすでに開始している。続いて、同様にMNAを用いた実験を実施し、MNAによる癌治療の可能性を追求する。これらの in vitro の実験が予定通り進めば、癌好発マウスを用いた in vivo の実験に進む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
癌好発マウスを用いた in vivo の実験におけるパラコート及びMNAの投与量は、当初平成28年度に詳細な実験により決定する予定であったが、パラコートについては、平成27年度中に最適な条件の絞り込みがある程度できたため、その投与量を決定するための詳細な実験を先行して開始した。代わりに、MNAを用いた in vitro の実験を平成28年度に後回しにしたため、次年度にその差額分をまわすことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
パラコートを用いた最適な投与量の決定のための詳細実験を昨年度から継続して実施しており、これが決定され次第、平成27年度から持ち越しの研究費を用いてMNAを用いた in vitro の予備実験を実施し、次に平成28年度の研究費を用いて、予定していた詳細実験を実施し、さらに癌好発マウスを用いた in vivo の実験に進みたいと考えている。
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