平成29年度において、ヒト肝臓癌細胞とヒト乳癌細胞について、パラコートによる治療効果を確認するための実験を行ったが、肝臓癌細胞は、正常肝細胞よりパラコートラジカルへの感受性が高く、ラジカルによる細胞増殖刺激効果を考慮して、パラコート濃度3μM程度の低濃度で、7日以上の長期間の観察を行うことで治療効果が期待できる可能性が示唆された。しかし、乳癌細胞は、正常乳腺細胞よりパラコートラジカルへの感受性が低いという結果であり、肝臓癌細胞と乳癌細胞で結果が異なった。そこで、乳癌細胞と正常乳腺細胞については、確認のための再実験を行った。用いた細胞は、これまでと同じく正常乳腺細胞としてHMEC、乳癌細胞としてMCF 7。培地は、同じHuMEC培地を用いた。培養2日後、パラコートの最終濃度が0(Control)、1、2、3、4、5μMになるように培地交換を行った。その後3日ごとに培地交換を行った。細胞生存率を、パラコート添加の翌日(1日目)、2日目、4日目、7日目に測定した。正常乳腺細胞は1日目からパラコート濃度が増加するに従って生存率が低下したが、乳癌細胞は、1日目は、パラコート1μMで生存率が増加し、2日目以降、パラコートの濃度が増加するに従って生存率が低下する傾向が認められた。乳癌細胞が1日目にパラコート1μMで生存率が増加したのはラジカルによる細胞増殖刺激効果の可能性があるが、前回の実験と同様に、乳癌細胞が正常乳腺細胞よりパラコートラジカルへの感受性が低いという結果であった。
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