研究実績の概要 |
胆汁酸はウェルシュ菌のSpo0Aの活性化を促進することを既に明らかにしたが、詳細を調べるためPhosTagを用いリン酸化Spo0Aの検出を行った。その結果、胆汁酸はSpo0Aのリン酸化を促進することが明らかとなった。本結果ならびにマイクロアレイの結果よりhistidine kinases, revR, phosphotransbutyrylase, hypothetical proteinを胆汁酸が関与し得る菌体遺伝子の候補とした。そこでhypothetical proteinの遺伝子欠損株を作製し芽胞形成への関与を調べたが、関与を示唆する結果は得られなかった。現在phosphotransbutyrylaseの遺伝子欠損株を作製中である。 ランダム遺伝子変異法に関してはEZ-Tn5を用いて形質転換を行ったが形質転換効率が非常に低く、変異ライブラリーを作製するほどのコロニー数の確保は難しいと判断した。そこでDembekらが2015年にC.difficileを用いて報告したmariner-based transposon systemに着目し、プラスミドの分与を受けた。 レドックスに関して、アスコルビン酸に加え他の還元剤(L-cysteine, glutathione, Na2S, thioglycollate)の芽胞形成への影響を調べたが、いずれも芽胞形成を促進または抑制しなかった。またH2O2に加え酸化剤である硝酸カルシウムの芽胞形成抑制効果が確認された。しかし一方で同じく酸化剤である硝酸カリウムや硝酸ナトリウムは芽胞形成へ影響を示さなかった。培地ORPの芽胞形成への影響を調べたが、培養開始時のORPと芽胞形成の相関性は確認されなかった。以上の結果よりレドックスの芽胞形成への影響は試薬特異性がある、または単純な試験管培養での評価は難しいことが示唆された。 以上の成果は国内外の学術集会で発表されると共に学術誌Applied and Environmental Microbiologyへの掲載が確定した。現在新たな論文を準備中である。
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