胆汁酸による芽胞形成の促進に関与する菌体因子の研究において、マイクロアレイによる候補遺伝子としてphosphotransbutylyrase遺伝子の染色体補完株を作製し、芽胞形成の評価を行った。欠損株で低下した芽胞形成率が染色体補完株において回復しなかったことから、今回作製した変異株では正しく評価できないことが明らかとなった。 ランダムミュータジェネシス法では次世代シーケンサーを用いて2回スクリーニングを行い、結果を統合解析した。その結果、111遺伝子が胆汁酸による芽胞形成に関与する候補遺伝子として同定された。更にその中の39遺伝子は培養早期(培養後8時間までに)に必要であることが示唆された。39遺伝子のうち2遺伝子はSpo0Aにリン酸を供与し得るhistidine kinaseをコードしており、また上記phosphotransbutylyrase遺伝子は111遺伝子の中に含まれることが明らかとなった。候補遺伝子である2つのhistidine kinase遺伝子の欠損株を作製し、芽胞形成を評価した。両遺伝子とも欠損株においては芽胞形成率が著しく低下したことから、胆汁酸依存性芽胞形成に関与する菌体因子である可能性が示唆された。 これまでウェルシュ菌食中毒株で遺伝子操作可能な株はSM101株のみであった。発見した現象の普遍化の検証を可能にするためには複数の遺伝子改変可能な株が必要である。そこで食中毒分離株のスクリーニングを行い、遺伝子改変可能な株を1株(W4232株)発見した。更にNCTC8239株の有する制限酵素DptGの遺伝子欠損を行い、遺伝子改変可能な株を新たに樹立した。
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