研究課題/領域番号 |
15K08784
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研究機関 | 八戸学院大学 |
研究代表者 |
吉田 稔 八戸学院大学, 健康医療学部, 教授 (80081660)
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研究分担者 |
佐藤 雅彦 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (20256390)
渡辺 知保 国立研究開発法人国立環境研究所, その他部局等, 理事長 (70220902)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発育期 / 水銀蒸気 / メチル水銀 / 複合曝露 / 神経行動毒性 / マウス |
研究実績の概要 |
発育・発達期における水銀蒸気とメチル水銀の複合水銀曝露による行動機能への影響をC57BL/6系雌性マウスを用いて行った。実験は対照群、メチル水銀曝露群(MeHg群)、水銀蒸気曝露群(Hg0群)、Hg0とMeHgの複合曝露群(Hg0+MeHg群)の4群に分け、1群12匹とした。曝露は出産直後から離乳までの27日間行った。MeHg群はMeHgとして3.85ppm含有固形飼料を与え、Hg0群は平均0.188(0.125~0.252)mg/m3の濃度で曝露チャンバー内で24時間行った。行動試験は12週齢に達したときに実施し、行動異常はオープンフィールド試験(OPF)、に受動的回避試験(PA)そして放射状迷路試験(RM)を用いて評価を行った。OPF試験では総移動距離が対照群とHg0群、MeHg群そしてHg0+MeHg群との間に有意差が認められた。また、中心滞在割合は対照群とHg0+MeHg群との間に差異が認められた。PA試験では訓練試行そして保持試行において対照群と各曝露群との間に差異は認められなかった。RM試験は8日間の試行を行い、「既に獲得したアームを訪れるエラー数」、「アーム再訪数」ともに対照群と各曝露との間に各試行間に有意な差は認められなかった。曝露終了後に測定した大脳の水銀濃度はHg0+MeHg群はMeHg群やHg0群に比べ、有意に高値を示し、小脳ではHg0+MeHg群とHg0群との間に有意な高値を示した。大脳、小脳の水銀濃度はHg0+MeHg曝露群、MeHg曝露群が1μg/g以上であり、Hg0曝露群は580~940μg/gの範囲内であった。 以上の結果から、Hg0とMeHg複合群の脳内水銀は単独曝露群に比べ、行動試験でもOPF試験で単独曝露群によりその影響は高い傾向にあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の発育・発達期における複合水銀曝露実験では、出産0日から曝露開始したため曝露中にマウスが死亡し、行動試験を行うに十分な個体数を確保できなかった。その結果、複合曝露の加齢による行動影響の研究にも遅延を生じた。平成28年度は新生仔への曝露時期と曝露濃度を変更し、実験を行った結果、生後12週目において行動異常が認められた。この結果から、今年度の加齢による影響に関する実験を中止した。最終年度は、新たに曝露条件の検討を行う。とくに水銀蒸気による曝露濃度を0.1mg/m3以下の許容濃度( TLV)で行うとともに、遺伝的要因による行動の修飾因子をメタロチオネイン遺伝子欠損マウスを用いて検討する。
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今後の研究の推進方策 |
2年間における雌雄マウスの行動試験結果を基づいて、水銀蒸気曝露濃度やメチル水銀濃度をより低い濃度で複合曝露の実験を検討し、発育・発達期における複合水銀曝露についてのリスク評価を行う。さらに、複合曝露が加齢による神経行動異常の発現にどのような影響を及ぼすかを検討する。メタロチオネイン遺伝子欠損マウスを用いて、複合水銀曝露のおける性差、遺伝的要因による感受性を検索し、水銀単独曝露に比べ、複合水銀曝露の中枢神経機能に及ぼす影響が相加性なのか相乗性かについて結論づける。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に予定した発育発達期に複合曝露の神経行動毒性に対する加齢が及ぼす影響にについて実験を行うことができなかったことから、未使用額が340,000円となった。また平成28年度に予定していたメタロチオネイン遺伝子欠損マウスを使用しての実験が平成27年度に計画していた実験の遅延によりも実施できなかったことが要因として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は平成29年度の研究計画に従って、再度は曝露条件を検討し、発育期における複合曝露ぼ神経行動毒性に及ぼす加齢の影響関する研究を行う。同時、メタロチオネイン遺伝子欠損マウスを用い、遺伝的要因による感受性に関する実験を実施する予定である。
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