研究実績の概要 |
慢性感染や炎症は極めて重要な発がん要因である。炎症が発がんに寄与する割合は、約25%以上と推算されており、炎症関連発がんリスクの早期評価と予防法確立が急務である。我々は、炎症に特異的に生成するニトロ化DNA損傷塩基の8-ニトログアニンが、がん好発部位で発がんに先駆けて生成し、新規バイオマーカーとして有望であることを明らかにしてきたが、フィールド調査や予防介入研究に実用可能な定量解析法がない。本研究では、8-ニトログアニンを簡便に高感度で定量解析する方法を開発し、ヒトにおける炎症関連発がんリスク評価への応用をめざす。 当初計画していたELISAの解析は感度が不十分であることと、使用する抗体が高額であるため、平成29年度は、電気化学検出器付き高速液体クロマトグラフィー (HPLC-ECD) を用いて試料中8-ニトログアニンの定量を試みた。炎症モデルとして一酸化窒素とスーパーオキサイドの同時発生試薬である3-(4-Morpholinyl)sydnonimine, hydrochloride (SIN-1) を用いた。仔牛胸腺DNAをSIN-1と反応させた後、抽出したDNAを酵素的にヌクレオシドに分解し、処理した後、HPLC-ECDで測定し、dG量に対する8-ニトログアニン量を定量解析した。その結果、反応させたSIN-1量に依存して8-ニトログアニン生成量が増加する現象を、HPLC-ECDで定量的に確認することに成功した。今後はヒト試料を用いた測定を行うため、試料中の夾雑物による測定への影響について、解析を進める予定である。
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