研究課題
アスベスト曝露は悪性中皮腫をはじめとする様々な疾患を引き起こすことが知られている。我々はアスベスト曝露が正常中皮細胞のがん化を誘導することに加え、腫瘍免疫を抑制することでがんの発生しやすい体内環境を形成することを提唱している。これまでに、腫瘍免疫において重要な役割を担うことが知られる制御性T細胞のモデル細胞株MT-2を用いて長期アスベスト曝露の影響を検討し、アスベスト長期曝露が転写因子FoxO1とFoxP3の発現を低下させることを見出している。これらの転写因子は細胞増殖の抑制やアポトーシスを誘導する作用を持つことから、これらの転写因子の発現低下が制御性T細胞の過剰な増殖と腫瘍免疫の低下をもたらす可能性を提唱している。本年度は、アスベスト曝露によるFoxP3の発現低下のメカニズムを明らかにすることを目的として、FoxP3遺伝子の発現調節領域のDNAメチル化修飾をバイサルファイトシークエンス法により検討した。その結果、アスベスト長期曝露細胞とコントロール細胞間ではFoxP3遺伝子領域中の2箇所のメチル化レベルに有意な差は観察されず、アスベスト長期曝露によるFoxP3発現低下はこれらの領域のDNAメチル化とは独立の機構を介することが明らかになった。FoxP3発現調節にはNFATやFoxO1などの各種の転写因子、DNAメチル化、ヒストン修飾などの様々なメカニズムが関与することが報告されており、アスベスト長期曝露によるFoxP3の発現低下の仕組みを明らかにするためにはさらに詳細な解析が必要である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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