研究課題/領域番号 |
15K08789
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
大藪 貴子 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 講師 (20320369)
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研究分担者 |
明星 敏彦 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (00209959)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 銀ナノワイヤー / 気管内注入試験 / 肺の炎症 / 病理組織変化 / 肺内滞留性 |
研究実績の概要 |
銀ナノワイヤーの長繊維から、超音波により繊維径は同じ短繊維を作成し、ラット肺に陰性対照群として蒸留水を用い、長短の繊維分散液を気管内注入した(投与量0.5mg/0.4ml蒸留水)。注入後、3日、1、3、6ヶ月後に各群10匹ずつ深麻酔下で解剖し、各5匹に気管支肺胞洗浄を行い、洗浄液中の総細胞数、細胞分画、LDHの測定を行った。残りの各5匹は病理組織標本を作製し、光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡、元素分析計を用い肺内に存在している銀ナノワイヤーの観察を行い、各3群の結果の差異を比較し、銀ナノワイヤーの長さが有害性に与える影響も検討した。 その結果、注入3日目には、陰性対照群に比較して、長短両注入群ともに肺重量、気管支肺胞洗浄液中の総細胞数、好中球数の有意な増加が認められた。光学顕微鏡を用いた肺の病理組織観察では、注入3日後では、両注入群ともに銀ナノワイヤーの沈着を伴った気管支周囲における肺胞マクロファージの増加および肺胞上皮細胞の増生が認められ、短繊維注入群より長繊維注入群で顕著であった。また長繊維銀ナノワイヤーは光学顕微鏡下でも、細胞内にはっきりと観察された。電子顕微鏡およびX線分析装置を用いて肺組織および気管支肺胞洗浄液中の銀ナノワイヤーの同定を検討し、定性的な観察が可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銀ナノワイヤーの気管内注入を本年8月に遂行したため、現在、注入後6カ月目までの解剖を終了し、肺の炎症、病理組織の経時変化を測定している。残すは、1年後の解剖のみであり、来年度8月の解剖にて終了し、銀ナノワイヤーの有害性について総合的に検討し、最終的な結果を導きたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、注入後1年の観察期間をおいたラットを解剖し、肺に対する銀ナノワイヤー長繊維、短繊維の肺への影響を最終的に検討したいと考えている。また、各解剖時期における注入後の肺に沈着している銀ナノワイヤーを化学的に定量し、有害性指標である肺内滞留性を求める。これらの結果を総合的に判断し、銀ナノワイヤーそのものの肺に対する有害性評価とともに、アスベストで存在するような肺の有害性に長さが影響するかどうかも検討する。
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