研究課題/領域番号 |
15K08791
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研究機関 | 北海道立衛生研究所 |
研究代表者 |
小島 弘幸 北海道立衛生研究所, 食品科学部, 主幹 (10414286)
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研究分担者 |
鈴木 智宏 北海道立衛生研究所, 食品科学部, 主査 (10414327)
室本 竜太 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30455597)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境 / 核内受容体 / 免疫 / 複合曝露 / ポリ塩化ビフェニル類 / ビスフェノール類 / 難燃剤 / 可塑剤 |
研究実績の概要 |
食品中には農薬,可塑剤(フタル酸エステル類など),ビスフェノール類,難燃剤(臭素系や有機リン系),ダイオキシン類,ポリ塩化ビフェニル類(PCBs),有機フッ素化合物など様々な化学物質が微量ではあるが残留しており,我々はこれらに日常的に曝露されている.最近,化学物質と結合する種々の核内受容体が免疫系細胞に存在することが明らかにされたが,これら受容体を介した化学物質の複合曝露による影響は未解明である.本研究の1年目では,食品中に残留する化学物質の免疫系細胞内に存在する核内受容体10種類に対する活性をルシフェラーゼアッセイを用いて調べた. アッセイの結果,化学物質の構造に依存した核内受容体への作用が確認された.フタル酸エステル類はエストロゲン受容体(ER), アンドロゲン受容体(AR), プレグナンX受容体(PXR)への作用を示した.ビスフェノール類はER,AR,PXR活性を示したことに加え,臭素化及び塩素化物がペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)活性を示すことを認めた.有機リン系難燃剤においてもER,AR,PXR活性を確認したが,それらのジエステル代謝物は何れの受容体活性も示さなかった(Kojima et al.2016).PCBsはER,AR,PXR活性を示し,さらにある種のPCBsはダイオキシン受容体(AhR)活性を示した.有機フッ素化合物は核内受容体の中でもPPARを特異的に活性化した.以上の結果から,食品中に残留する化学物質の中にはER,AR,PXRに作用するものが多く,生体内で代謝され化学構造が変化した場合には,その受容体選択性も変わることが示唆された.免疫系細胞においてPPARの活性化は免疫抑制に働き,AhRの活性化はある種のサイトカイン産生を増強することが報告されていることから,化学物質がER,AR,PXRを介してどのような複合曝露影響を示すか興味深い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究1年目は食品中に含まれる化学物質について免疫系細胞に存在する核内受容体への作用を調べたが、その中でもER, AR, PXRへの作用を示す物質が多く確認できた。このことは、特にこれらの受容体にフォーカスを当てて今後の複合曝露影響を調べる判断材料となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,核内受容体に作用した化学物質を複数用いて,免疫系細胞への曝露影響(サイトカイン産生等)を調べる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
翌年度に比較的高額であるサイトカインELISAキットの購入及び国際学会での発表を予定していたため。
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次年度使用額の使用計画 |
複数の化学物質による免疫系細胞への影響をサイトカインの遺伝子発現や蛋白産生を調べる。得られた成果を国際学会等で発表する。
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