研究実績の概要 |
食品中には農薬,可塑剤(フタル酸エステル類など),ビスフェノール類,難燃剤(臭素系や有機リン系など),ダイオキシン類,ポリ塩化ビフェニル類(PCBs),有機フッ素化合物など様々な化学物質が微量ではあるが残留しており,我々はこれらに日常的に曝露されている.最近の研究により,化学物質と結合する種々の核内受容体が免疫細胞に存在することが明らかにされたが,これら受容体を介した化学物質の複合曝露による影響は未解明である.今年度はヒトマクロファージ様細胞株THP-1に対して、LXRアゴニストのT0901317、エストロゲン受容体アゴニストのビスフェノールA(BPA)、PPARalphaアゴニストのMEHP、AhRアゴニストのPCB126を単独あるいは複合的に曝露し、核内受容体を介するシグナル(サイトカイン産生など)の変化を調べた。 THP-1細胞による遺伝子発現において、T0901317曝露はinterleukin-1(IL-1)beta, LXR, fatty acid synthetase,CYP2D6, RORなどを増強し、PGE合成酵素, GPR32, GPR78, UGT3A1などを抑制した。一方、BPA曝露はG蛋白受容体141, グランザイム3、CYP3A43, RXRなどを増強し、G蛋白受容体32, IL-36, GABA受容体などを抑制した。また、MEHP及びPCB126曝露により、それぞれPPAR及びAhRシグナルに依存した遺伝子発現変化が認められた。さらに、IL-1などのサイトカイン産生については、遺伝子発現と同様にT0901317曝露で増加したことを認めた。これらの化学物質を混合してTHP-1細胞へ複合的に曝露した場合の遺伝子発現は、単独曝露に比べ、変動遺伝子数の増加や核内受容体シグナルの増強などの変化を確認した。
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