研究課題/領域番号 |
15K08792
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
伊藤 秀美 愛知県がんセンター(研究所), 疫学・予防部, 室長 (90393123)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胃がん / リスク予測 / 遺伝的要因 / 環境要因 / 個別化予防 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、胃がんリスク予測モデル構築、累積リスク算出のための、症例対照研究を実施した。 対象者は、愛知県がんセンター病院疫学研究プログラム(HERPACC)への参加者の、2001-05年診断の胃がん患者697例、性と年齢を適合させた1372例の非がん患者である。自記式質問票にて得られた生活習慣のうち、喫煙、飲酒、野菜果物摂取、胃がん家族歴を、リスクモデルに投入する要因の候補とした。対象者の血漿中のピロリ菌抗体価、ペプシノーゲンを測定し、それぞれピロリ菌感染、胃粘膜萎縮の有無を判定した。この二つの要因を組み合わせ、対象者をA-Dに4分類した(ABCD分類)。また、対象者のDNAを用いて、既報の胃がんの全ゲノム関連解析にて同定された2つの胃がん感受性遺伝子多型PSCA-rs2294008, MUC-rs4072037を測定した。胃がんリスクとの関連は、交絡の可能性のある要因で調整した条件付きロジスティック解析によるオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)で評価した。 これらの要因の中で、胃がんリスクとの関連が認められたのは、喫煙、野菜果物摂取、ピロリ菌感染[非喫煙に対する現在喫煙のOR: 1.92 (95%CI, 1.25-2.53)]、胃粘膜萎縮[野菜果物摂取高摂取に対する低摂取のOR: 1.33 (1.03 - 1.71)]、ABCD分類[A群に対するB, C, D群のOR: 5.68 (3.98 - 8.11), 8.29 (5.92 - 11.6), 8.35 (4.99 - 14.0)]、PSCA多型[OR(per allele): 1.53 (1.26 - 1.76)]であった。 また、本研究の外的妥当性の評価のため、HERPACCに2005-13年の参加者を対象とした症例対照研究を実施するため、遺伝子多型、ピロリ菌抗体、ペプシノーゲンを測定中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施した症例対照研究の外的妥当性を評価するために、研究当初に予定していなかったもう一つの症例対照研究を実施することとなり、現在、遺伝子多型やピロリ菌抗体、ペプシノーゲンを測定中である。平成27年度に予定していた遺伝的要因と環境要因による層別化解析は、2つの症例対照研究を統合した形で実施することにしたため、平成27年度には実施できなかったが、新たな症例対照研究を追加することを考えると、全体の進捗としては、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)妥当性評価のために追加した2つめの症例対照研究(Validation study)を平成28年度前半に実施する。 (2)1つめの症例対照研究(Derivation study)にて、胃がんリスクに関連のあった因子を用いて、リスク予測モデルを構築する。 (3)同様に、Validation studyにおいても、(2)で用いた要因を用いてリスク予測モデルを構築する (4)(2)(3)で構築したモデルのリスク予測能を、Discrimination, Calibration, Reclassificationの観点からそれぞれ評価する。 (5)2つの症例対照研究を統合し、リスク予測モデルに用いた遺伝的要因と環境要因で層別化した累積リスクを算出し、個別化予防介入に効果的なリスク提示方法について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
症例対照研究(対象者数約2000)において、胃がん感受性遺伝子多型を複数測定する予定にしていたが、日本あるいは世界における研究において、最も確かな遺伝子多型ひとつに絞って多型を測定したため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画当初には予定しなかったが、対象者を拡大した。対象者のピロリ菌感染の有無、萎縮性の有無について、血清学的に評価するため、ピロリ菌IgG抗体、ペプシノーゲンIおよびIIを測定する。
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